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産業廃棄物税導入の本当の目的

 最近、小難しい話が続いていますので、今日は結論から書きます(笑)。


 産業廃棄物税導入の本当の目的


 それは、


 「産業廃棄物の発生を抑制する」という姿勢を示すことにあります。
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 注意が必要なのは


 「産廃を抑制するため」ではなく


 「産廃を抑制しているという姿勢を示すため」であることです。
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 なぜ こんな辛辣なことを書くのか?


 2つ前のメルマガで少し書きましたが、産廃税を導入するまでの発想が、
非常に短絡的だからです。


 (該当部分を抜粋 ここから)

 「取り易い所から取れ!」という発想に基づいています。
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 産廃はケシカランものだから、減らさねばならん!

           ↓

      だから、課税してしまえ!
   課税すれば、廃棄物の抑制も進むだろう

 (ここまで)


 確かに、短期的にはそういった効果があるでしょう。


 しかし、産廃税が制度として定着してくると、重大なモラルハザードの原因
となる可能性もあります。


 すなわち、
 「税金を払ってるんだから、いっぱい産廃を出したっていいだろう!」と
なりかねないからです。

 それに、産廃税を導入したからといって、産廃の排出量が減るかどうかもか
なり怪しいものがあります。


 ここで、地域ごとの産廃税導入状況を、再び掲載します。

 北海道  未導入
 東北   青森、岩手、宮城、秋田、福島  (山形以外)
 関東   未導入
 北陸   新潟
 東海   愛知、三重
 近畿   滋賀、京都、奈良
 中国   岡山、広島、鳥取、島根、山口  (地域内100%)
 四国   未導入
 九州   福岡、佐賀、長崎、大分、鹿児島、熊本、宮崎、沖縄
     (地域内100%)


 近畿地方では、滋賀・京都・奈良が産廃税を導入しています。


 ここで例として、京都の排出事業者が、産廃税への対応を考える場合を想定
します。


 その事業者が、産廃税への対処としてとれる行動は、次の3つがあります。

1.諦めて産廃税を払い続ける
2.産廃税の負担が重荷なので、その分の廃棄物を減量する
3.産廃税を支払わなくてもよい地域に、産廃を持ち込む


 産廃税を導入した行政としては、排出事業者が「2」の自助努力をしてくれ
ることを期待しています。


 しかし、実際には、「3」の税負担をしなくてもよい地域への流出、という
流れが一番多いです。


 だからこそ、中国・九州は、広域的に一丸となって産廃税を導入したわけで
すね。
 「鉄のカーテン」ならぬ「税のカーテン」です。


 このように、産廃税は地域外への産廃の流出を促進する可能性があるので、
 私は勝手に産廃税のことを
 「産廃あっち行け税」と呼んでいます(笑)。

 「鬼は外。福は内」の考え方ですね。


 また、こと廃棄物の問題に関しては、「性善説」ではなく、「性悪説」で考
える必要があります。


 上に書いたシナリオは性善説に基づいています。
 性悪説に基づくと、こうなります。


3.産廃税を払うのは嫌なので、とにかく安く処理してくれるところに頼もう

            ↓

 (委託された無法者) 遠いところに持っていくと、燃料代がバカにならん
            時間もかかるしなあ
            え〜い 面倒だ。山に捨ててしまおう!
            そうすりゃ 自分の懐に丸々金が残るしな♪


 こうなると、産廃税を導入したことで、かえって不法投棄を増やしてしまう
ことになります。


 まさに、本末転倒ですね。


 最悪なことに、地域全体で産廃税を導入したとしても、このシナリオは変わ
りません。
 むしろ、どこに持ち込んでも税金を取られるので、不法投棄をより助長しか
ねません。


 産廃不法投棄量が日本一だった千葉県は、このシナリオの恐ろしさが分かっ
ているので、産廃税を導入しない
   ↑   ↑   ↑
 これは私の勝手な推測です(笑)。

 今回は、世の安易な風潮に異議を唱える、辛口メルマガになりました。


 次回は、「じゃあ、どうするんだよ」というご批判に答える、甘口メルマガ
にいたします(笑)。

「よく分かる!!廃棄物問題」
元産廃Gメンの行政書士による、廃棄物問題の解説。廃棄物処理法の問題点、ゴミ処理技術、信頼できる処理業者の見つけ方、すぐに効果が出るゴミの削減方法、住民運動の留意点、産業廃棄物処理業者の経営改善手法、法改正情報など、ホットなニュースをお知らせしていきます。
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