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規制緩和の裏側を見抜く!

□ 規制緩和の裏側を見抜く!


 前回のメルマガのおさらいです。


 ・政府は、産業廃棄物と一般廃棄物の区分を見直す方針を固めた

 ・一般廃棄物は処理責任者が市町村だが、再利用のノウハウが乏しい場合
  が多く、リサイクルが進まない一因だった

 ・産業廃棄物の対象拡大で再利用事業者の参入を促し、ごみの減量や
  資源の有効活用につなげることを目的としている

 私も、施策の方向性としては間違っていないと思います。


 しかし、施策を進める根本に、「何でも民間に開放すれば良い」という安易
な考えがあるとすれば、大きな問題です。


 なぜか?


 「規制緩和」とは、「行政の責任を放棄し、民に好き放題やらせる」ことで
はありません。


 「構造計算書の偽造問題」で明らかになったように、行政の権限を民に丸投
げするだけでは、公正な市場が形成されない場合があります。


 「清掃法」が改正され、「廃棄物の処理と清掃に関する法律」が施行された
際に、初めて「産業廃棄物」という定義ができ、
 「産業廃棄物」は事業者自ら、すなわち民が全て処理すべきこととされまし
た。


 日本は資本主義社会ですので、産廃の処理を排出事業者自らが負うのは当然
です。
 しかしながら、そのルールを厳格に定めず、なあなあでやってきた結果が、
日本各地で深い爪あとを残している「不法投棄」や、それに伴う「水質汚染」
「土壌汚染」なのです。


 ここでは、
 公正な市場 = 廃棄物が適切に処理される社会 と定義します。

 これらを前提に考えると、
 今回の、「産廃と一廃の区分を見直す」という政府決定を、手放しで喜ぶこ
とはできません。


 どうも・・・
 「臭いものには蓋をしろ」的な、ご都合主義が透けて見えるのです(汗)。
 「俺らが処理するのも面倒だから、産廃屋にやらせとけ〜」というような


 真に、国民、社会のためを考えた改革なら良いのですが・・・


 具体的に考えると
 例えば、来年の1月1日から、「剪定くず」が急に一般廃棄物から産業廃棄
物に分類が変わるとします。
 今年の12月31日までは一般廃棄物だったのに、1月1日以降は産業廃棄
物となるので、市町村が「剪定くず」の一切の受け入れを拒否することが考え
られます。


 すると、来年1月1日以降は、「剪定くず」を産廃処理業者に持ち込むしか
なくなります。


 しかし、持ち込み先である産廃処理業者の施設の処理能力は限られています
ので、木くずの搬入の急激な増加には対応できません。


 その結果、処理しきれない「剪定くず」が不法投棄されたり、法律で禁止さ
れている野外焼却などをされてしまう場合がでてくるでしょう。


 その結果、誰が得をするのでしょうか?


 誰も得をしません!!


 産廃処理業者は、施設の処理能力を超過する廃棄物を、安全に管理し続けな
ければなりません


 行政は、不法投棄された廃棄物を行政代執行で撤去しなければなりません。


 国民は、行政代執行の費用を税金と言う形で負担しなければなりません。


 このように、問題の解決を、民にただ丸投げするだけでは、
 公正な市場の形成を今より遅くするだけなのです。


 もちろん、現時点では、市町村が「剪定くず」の受け入れを一切拒否する、
と決まったわけではありません。
 あくまでも仮定のお話です。
 しかし、今までの日本の廃棄物行政の実態を考えると、有り得ない話でもあ
りません。


 そのため、私個人の考えとしては、
 「産廃」と「一廃」の区分を見直すというよりは、
 産廃処理業者に、「産廃のみならず、一般廃棄物を処理する権限を与える」
方が望ましいのではないかと思っています。


 しかも、産廃処理業者にその権限を一律に付与するのではなく、
 施設の処理能力、リサイクル技術、財政基盤など、諸々の条件を満たす優良
な業者にのみ、その権限を与えるのです。


 そうなれば、処理業者にしてみても、
 新たに、一般廃棄物のコンスタントな搬入を見込めますので、
 やる気のある処理業者にとっては、「リサイクルに対応できる技術を導入す
る」という、インセンティブが働きやすくなります。


 そして、市町村はリサイクル不可能な廃棄物のみを受け入れることとし、
 リサイクル可能な廃棄物は、それぞれに対応した民間業者に搬入させる


 こうなってこそ、「リサイクルの需要に対応した」と言えるのではないで
しょうか。

「よく分かる!!廃棄物問題」
元産廃Gメンの行政書士による、廃棄物問題の解説。廃棄物処理法の問題点、ゴミ処理技術、信頼できる処理業者の見つけ方、すぐに効果が出るゴミの削減方法、住民運動の留意点、産業廃棄物処理業者の経営改善手法、法改正情報など、ホットなニュースをお知らせしていきます。
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