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蟻の一穴

□ 蟻の一穴

 2週間前の話になりますが、2月3日に、
 「石綿による健康被害の救済に関する法律」(通称アスベスト新法)案と
関連改正法案が、成立しました。


 6月に、石綿を使用していた工場の周辺住民にも健康被害が発生している
ことが発覚してから、七カ月という異例のスピードで法案が成立しました!


 立法作業は早かったものの、日本は欧米と比べて、アスベストの使用を規制
するのが遅すぎたため、本来なら被害に遭わなくても済むはずだった人がたく
さんおられます・・・・


 だから、単純に喜ぶことができないニュースですが、アスベストが原因で、
苦しんでいる方にとっては、現状より一歩前進したと言えるかもしれませんね


 ちなみに、
 ■アスベスト新法の骨子はこのようになっています。
(1) 周辺住民など労災補償を受けられない患者と遺族が対象
(2) 認定患者には医療費の自己負担分と療養手当(月10万円)など、遺族に
  は特別遺族弔慰金と葬祭料(計300万円)
(3) 認定や給付は独立法人環境再生保全機構が行う
(4) 時効で労災補償を受けられない遺族に特別遺族年金か特別遺族一時金を
  支給
(5) 救済給付の財源は国と都道府県のほか労災保険適用事業主から徴収。
  石綿関連企業から特別拠出金を徴収。徴収は19年4月から開始


 政府は年度内に給付金の申請受け付けを始める方針。


 新法は、労災補償を受けられない周辺住民などの患者に療養手当などを給付
するもので、アスベストを原因とする中皮腫や肺がんが対象
 石綿肺や良性石綿胸水は給付対象になっていません(今後検討される予定)


 療養手当などの給付財源は、国・都道府県の出捐の他、
 労災保険適用雇用主ら約二百六十万社から徴収し、
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 アスベスト関連企業には追加費用を求めるそうです。


 ということは・・・・
 アスベストに関わりの無い、IT企業などからも徴収するってことですね。


 産業界からは当然、「アスベストとは無関係な業界からも徴収するのか」と
いう異論も出ました。


 しかし、国は
 「アスベストはインフラで使われ、多くの企業が恩恵を享受した。」
 「原因社がどこかということではない」 との理由で押し切りました。


 1社あたりの負担額は、年間数千円程度になる予定です。
 まさに、広く薄くというやり方ですね〜


 この報道を読んで、少し考えたことがあります。


 アスベストで苦しんでいる人たちを助けるために、お金を払うことは
やぶさかではありません。


 しかし、国がもっと真剣に取り組んでいれば、被害の発生をもっと早く、
しかも小規模にとどめておくことができたはずです。


 アスベストの有害性は、少なくとも20年以上前から指摘されていたわけ
ですから!


 国や都道府県が出捐するお金だって、元々は国民・法人が支払った税金なの
です。


 つまり、国民・法人の全体で、国の尻拭いをしてやるということですね。


 だいぶ前の、銀行への公的資金の注入も同じことですね。


 この国は本当に資本主義国家なのかと疑問に思ってしまいます。
 実は、そうではないのかもしれませんね(苦笑)


 「国民全体で負担するから、問題が起きてから動けばOK〜」と、脳天気に
考えているわけではないと思いますが、


 「二度あることは三度ある」
 「仏の顔も三度まで」  と言いますので、

 二度とこのような失態をして欲しくないものです。

 中国の古典「韓非子」にこういう言葉があります。
・千丈の堤も蟻穴より崩る  (せんじょうのつつみもぎけつよりくずる)

「千丈もある頑丈な堤も、小さな蟻やオケラの穴が原因で崩れる」
というお話です。


 為政者は、今回の出来事を、
 自分達が迅速に行動したお陰だという「成功体験」ではなく、
 自分たちが最初の段階で行動しなかったために問題が大きくなったという
「重要な教訓」にしてもらいたいものです。


 ちなみに、給付額は政令で定まりますが、
 現在治療中の患者には医療費の自己負担分と月10万円の療養手当、
 被害者遺族には特別遺族弔慰金280万円と葬祭料20万円の計300万円
が支払われます。


 一人の人生の価値と比べれば、全然足りない金額だと思いますが、
 「千丈の堤も蟻穴より崩る」の言葉どおり、
 ひとまずの突破口になる可能性のある制度ですね。

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