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統計資料から読み解く産廃処理業界の実情

□ 統計資料から読み解く産廃処理業界の実情


 前回までのメルマガでは、データをあまりお示ししませんでしたので、
 今回と次回のメルマガでは、データをふんだんに示します(笑)。


 まずは、こちらの環境省のHPから、最新版の統計資料(PDF)を入手
してください。

 平成15年度
 産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況
 http://www.env.go.jp/recycle/waste/kyoninka/kyoninka_h15.pdf


 この資料は、今年の3月31日に公開されたばかりの資料です。
 最新版であるにもかかわらず、平成15年度分というのがご愛嬌ですが(笑)

 さて、皆さんのパソコンにダウンロードしていただき、紙で印刷していただ
けましたでしょうか?


 よろしいでしょうか?


 では、今回のメルマガの本題に入ります。
(印刷できる環境にない方のために、できるだけ、資料が無くても分かるよう
 にご説明していきます。)


 最初のページには、
「産業廃棄物処理施設の設置状況について」という資料が載っています。


 その中の、「表1−1 産業廃棄物の処理施設数」という表をご覧ください
 この表には、日本にある、産業廃棄物処理施設の件数が載せられています。


 産業廃棄物を埋立てる、最終処分場が2,547件
 埋立てる前に焼却したり、破砕したりするための中間処理施設が19,916件
 となっています。
 合計で、22,463件です。


 前年(H14年)と比較すると、

          H14年   H15年度

 最終処分場    2,641件 ⇒ 2,547件

 中間処理施設   19,284件 ⇒ 19,916件  となっており、

 全体の数字的には、わずかに増加しています。


 しかし、最終処分場などは、
 新規設置数24件に対し、廃止した処分場が52件と、新規設置の倍以上の
処分場が廃止されています!


 これは、どういう事態になるかと言うと・・・
 ますます、最終処分場の枯渇化が進むということです。


 日本の将来のためには、脱埋立てを図るのが正解なのですが、急激にその
状態まで産業構造を変革するのはかなり困難です。
 そのため、あと数年のうちに、脱埋立て社会を目指し、産業構造を変革して
いく必要があるのです!

 最終処分場は減少傾向にありますが、中間処理施設はどうでしょうか?
 同じく、表1−1を見てみましょう。
 注目すべきポイントは4つあります。


 まず、
「廃プラスチック類の破砕施設」と「木くず又はがれき類の破砕施設」を
ご覧ください。


 この2つの施設は、新規設置数が異常に多く、廃止数の6倍以上も新たに
設置されています。


 なぜ、この2つの施設だけが、たくさん設置されているのか?


 それは、前述した、最終処分場の枯渇化の影響が一因となっています。
 

 大ざっぱにご説明すると、概ねこのような流れがあるからです。


 埋める場所が無い ⇒ ゴミをできるだけ小さくする ⇒ リサイクル


 木くずは、破砕して、燃料として売却
 プラスチックも、破砕して、燃料または原料として売却


 このように、燃料または原料として売却する方が、ゴミとして処分するより
もいくばくかの利益が残ります。


 最終処分場の枯渇化という危機的な状況に瀕して、ようやく新しい処理
ルートができつつあります。


 しかしながら、一挙に処理施設が増えすぎたため、需要と供給を比較すると
供給側(産廃処理施設)の生産能力が過剰になってしまいました。


 その結果、価格の下落が起こり、莫大な設備投資をしたにもかかわらず、
経営難に苦しむ業者が増えてしまいました。


 需要と供給のバランスを考えることは大切です。


 最後に、「廃プラスチック類の焼却施設」と「その他の焼却施設」をご覧く
ださい。


 この2つの施設数は、最終処分場と同様、縮小傾向にあります。


 このことが、日本において、脱焼却化が進んでいる証拠になるのなら、
素晴らしいことなのですが、
 実情は、ダイオキシン対策に多大な経費が掛かるためといった、専ら、経済
的な原因によるものです。


 その証拠に、費用対効果をあまり真剣に考えなくても良い、市町村の焼却炉
の場合は、「ゴミの減量化」を一方で叫びながらも、ゴミが今より大量に発生
する条件を想定した、過剰な能力の焼却炉を続々と設置しています。


 事情やことの経緯はどうあれ、民間部門においては、焼却離れが進みつつ
あるのも事実です。


 このまま良い方向に向って欲しいものです。


 次回に続く。

 尾上 お薦めの良書

 「ごみ処理のお金は誰が払うのか」
 服部 美佐子 (著), 杉本 裕明 (著)  合同出版
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「よく分かる!!廃棄物問題」
元産廃Gメンの行政書士による、廃棄物問題の解説。廃棄物処理法の問題点、ゴミ処理技術、信頼できる処理業者の見つけ方、すぐに効果が出るゴミの削減方法、住民運動の留意点、産業廃棄物処理業者の経営改善手法、法改正情報など、ホットなニュースをお知らせしていきます。
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