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収束から発散へ


 本日は、環境問題全般に通じる話題です。


 前回までのメルマガで、「日本はゴミ焼却時の熱回収率が低い」とご説明
しました。


 経済・科学技術の分野では先進国なのに、なぜこのような体たらくだったの
でしょうか?


 その理由は一つではなく、多くの要因からなるものですが、
 「ゴミの焼却時に、焼却熱のエネルギーを有効に利用しよう」という発想が
なかったことも大きいでしょう。


 明治維新以降の日本では、急増した人口と、それによって発生した大量の
廃棄物に対応するため、「焼却処理」をゴミ処理の中心にしてきました。


 なぜ、「焼却」を中心にしたかと言うと


 国土の狭さ=ゴミの埋立場所が限定される
 四季を通じて温暖湿潤な気候のため、モノが腐敗しやすい


 このような理由で、日本は「焼却」処理を中心にせざるを得なかった と
言われています。


 現代でも、いまだに日々家庭から発生するゴミの大半は、市町村の焼却施設
で燃やされています。


 ゴミを早く処分しなければ・・・
      ↓
  とにかくすぐ燃やせ!


 このように、「目の前のゴミ処理」という問題だけに、力が収束していたの
です。


 ゴミを燃やすことしか考えていませんでしたから、
 「ダイオキシン」「資源の無駄遣い」「税金の無駄遣い」「社会資本の無駄
遣い」 という問題に気づくのが遅れました。


 まさに、「木を見て、森を見ず」ですね。


 個人的には、
 日本人は、「0から1を作るのは苦手」だが、「1を10に発展させるのは
得意」な民族だと思っています。


 日本人は、1を10にするために、脇目も振らず全力を振り絞ります。
 目標を集団で共有すると、全員一丸となって、自分のことを省みず、目標の
達成に邁進します。


 それは、日本人特有の長所であり、短所でもあります。


 短所として出た場合、
 力を収束させるあまり、視野が非常に狭くなってしまいます。


 力を収束させることも重要なのですが、これからは良い意味での発散が求め
られる時代になったと言えるでしょう。


 前回のメルマガを具体例として使うと、


 「焼却処理が最善」という、ゴミの見かけを小さくすることだけにこだわる
のではなく、


 「ゴミの発生抑制、分別、再利用が基本」
 「再利用できない(しにくい)モノに限って焼却」
 「焼却と同時に、焼却熱を有効に利用」
 「焼却後の灰を、資源として再利用する」 etc


 このように、一つの問題を一つの方法で解決すれば済む時代ではなく、
 一つの問題を多面的に捉え、それぞれの局面から有効なアプローチを行って
いくことが、非常に重要になってきました。


 もっとも、従来の収束思考だけでは、現代の複雑に絡み合った環境問題を解
決することは不可能になってきました。


 我々は既に、否応なしに、思考を多方面に発散させなければならない時代に
生きているのかもしれません・・・・

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