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「清掃」と「汚物」


 前回のメルマガでは、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」が制定される
までの、歴史的な背景をご説明いたしました。


 最初は「汚物掃除法」で
 その次が「清掃法」
 最後に「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」 という順序で法律が制定さ
れたというお話でした。


 バックナンバー
 http://www.office-onoe.com/magazine/2007/01/post_65.html


 ここから 今回のメルマガです。


 では、「汚物掃除法」の「汚物」とは一体どんなものだったのでしょうか?


 「汚物」と言うくらいですので、「汚い物」のことを指しているのは分かり
ます。


 ちょっと食事中には読みたくないメルマガになっています(笑)。


 「汚物掃除法」では、「汚物」のことを

 「汚物掃除法ニ依リ掃除スヘキ汚物ハ塵芥汚泥汚水及糞尿トス」と規定して
います(汚物掃除法施行規則第1条)。


 カタカナ交じりの法律なので非常に読みにくいですねえ。
 分かりにくいので要約します。


 「汚物掃除法」では
 「汚物」とは、「塵芥、汚泥、汚水、糞尿」と定めていました。


 こうして見ると、当時の生活・産業形態から発生する不要物や残渣物を
処理の対象としていたわけですね。


 中でも、「汚物」の対象に、「汚泥」が含まれていたことに目が惹かれます。

 なぜなら、21世紀の現在でも、「汚泥」という言葉は、「廃棄物処理法」
の中で現役として活動を続けている言葉だからです。

 余談でありますが、「汚泥」という言葉にも色々な問題があります。
 これは現在進行中の問題でもありますので、後日このメルマガで取り上げる
機会があるかもしれません。

 「汚物掃除法」が制定された明治から、時代は一気に「清掃法」の昭和29
年に進みます。


 ここで、「掃除」という言葉が「清掃」に変わりました。


 「清掃」とは、「清潔に掃き清める」という意味ですね。
 「掃除」以上に、公衆衛生への配慮が感じられる言葉です。


 平成の現代になっても、法律名称の中に、いまだに「清掃」が含まれている
のは、こういう時代背景があったためです。


 今回のメルマガで重要なことは、
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の底流には、明治33年の「汚物掃除
法」のDNAが生きているということです。


 真に日本の廃棄物問題を理解するためには、「汚物掃除法」のDNAを理解
しておかなければなりません。


 「汚物掃除法」のDNA


 ごみ≒汚物=すぐに処理すべきもの ⇒ 手っ取り早く燃やしてしまえ!


 とにかく目の前から無くなってしまえば、後は 野となれ 山となれだ


 ごく大雑把にまとめると、このようなイメージです。


 もちろん、
 公衆衛生を良好な環境に保つのは重要なことです。


 しかし、それだけが全てではありません。


 ごみ処理に必要なコストやエネルギー収支を無視してはなりません。


 また、焼却処分に安住していると、「リデュース」「リユース」「リサイクル
」がまったく進みません。
 焼却のみに頼った結果、ダイオキシン問題で大騒ぎしたことが記憶に新しい
ところです

 このように、現在の社会情勢では、従来の「汚いから燃やせ〜」という単純
な論理だけでは、問題の解決が図れなくなってきました。


 遅まきながら、国はそのことに気がつき始めたので、
 「焼却などの単純処分」といった「勧善懲悪」ドラマから、「多様な登場人
物が登場する群像劇」にシナリオを変更しつつあります(笑)。


 「多様な登場人物」とは、「リサイクル」や「バイオマスエネルギー」など
の、単純処分以外の様々な廃棄物の利用方法のことです。


 しかし
 「廃棄物」という言葉の呪いが・・・・


(次回に続く)

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