メルマガバックナンバー > 「廃棄物」という言霊(ことだま)

「廃棄物」という言霊(ことだま)


 本日は、「にほんごであそぼ」なメルマガです(笑)。


 私は常々、「廃棄物」という言葉は、非常にまずい言葉だと思っていました。


 「まずい」というのは、「悪い」とか「汚い」という意味ではなく、
 「不適切な」という意味です。


 もっとも、「不適切」と言いながら、他に適切な用語がないため、このメル
マガでも「廃棄物」をタイトルにしておりますが・・・・


 では、なぜ「不適切」と考えているのか?


 その理由をご説明するためには、「廃棄物」という言葉の意味をよく考える
必要があります。


 「廃棄物」は「廃」「棄」「物」という3つの漢字で構成された言葉です。


 「物」の説明は不要だと思いますので、「廃」と「棄」の2つの漢字の意味
を見てみましょう。


 漢和辞典「漢語林」には、次のように書かれています。


 「廃」=1.すたれる。おとろえる。ゆるむ。役に立たなくなる。ほろびる。
     2.すてる。やめる。のぞく。
     3.ふす。ひれふす。
     4.不治の病。


 「棄」=1.すてる。なげすてる。ほったらかす。
     2.取り上げない。しりぞける。用いない。
     3.見捨てる。見放す。
     4.忘れる。


 どうでしょう?全てネガティブな意味ばかりです(笑)。


 「廃」の用例・・・・「廃止」「荒廃」「廃墟」「廃業」「廃屋」
 「棄」の用例・・・・「破棄」「遺棄」「棄却」「放棄」  などなど

 実際に使われる時の言葉の意味も、全てネガティブです。


 このように単独でもネガティブな意味の漢字を合成して、「廃棄物」と毎日
連呼しているわけですので、明るい気持ちになるわけがありません。


 「廃棄物」という言葉を使う時、「廃棄物」で表される「もの」は、「捨て
るしかないもの」という意味になってしまいます。


 捨てるしかない=早く目の前から無くしてしまいたい=燃やしてしまえ!
                         =埋めてしまえ!

 と、「パブロフの犬」よろしく、条件反射的に、目の前から忌避すべきもの
として認識してしまいます。


 しかし、本当にそうするしかないのでしょうか?


 決してそんなことはありません。


 あなたもよくご存知のように、一昔前ならいっしょくたに燃やされていた
ものが、分別次第で資源として利用される時代になりました。


 特に、プラスチックや木くずについては、資源としての取引市場が形成され
るまでになりました。


 それなのに、いまだに「廃棄物」という言霊を使い続け、
 「捨てるしかないもの」=「忌避したいもの」という印象を拡大再生産し続
けています。


 「そんな些細なことをグチャグチャ言うなよ〜」と思う人がいるかもしれま
せん。


 確かに些細なことですが、言葉の当てはめというのは、非常に重要です。


 「脱税」と「節税」は、一文字が違うだけですが、全然別の意味ですよね。
 中には、「『脱税』も『節税』も一緒の意味だ」と思う人がいるかもしれま
せん(笑)。


 真の「循環型社会」を構築するためには、「廃棄物」という概念自体を変え
ることが必要です。
 そうしないと、「廃棄物=忌避すべきもの」という連想の呪縛から逃れられ
ないからです。

 ま 循環「型」社会という言葉自体、意味が不明確な概念ですが(汗)。
 しかし、最凶ネガティブキーワードの「廃棄物」よりはマシです。


 今の日本は、「廃棄物」というちょっと茶色がかった色眼鏡を通して、世界
の姿を眺めています。


 元々茶色の色眼鏡ですので、網膜に写る映像は、すべて薄汚れて見えてしま
います。


 「うわ 汚い〜!」としか思えないわけです。


 「循環型社会」という、「環境に優し」そうな社会を作りたいのであれば、
茶色の色眼鏡はすぐに捨てなければなりません。


 なぜなら、全てが茶色の世界では、モチベーションが上がらないどころか、
逆に世界を壊したくなってしまうからです(笑)。


 日本に必要なことは、茶色の色眼鏡を通してではなく、ありのままの世界を
自分の目で見つめることです。

 しかしながら、実際のところ、「ありのままを見つめる」というのは非常に
難しいことです。


 「文化」「風習」「価値観」「経済的理由」といった、様々なフィルターが
どうしても外れないからです。


 色眼鏡を全部捨てることは不可能ですが、意識的に「色の薄い」眼鏡にする
ことは可能です。


 そのきっかけになるのが、「廃棄物」という言葉の見直しであるのは間違い
ありません。

「よく分かる!!廃棄物問題」
元産廃Gメンの行政書士による、廃棄物問題の解説。廃棄物処理法の問題点、ゴミ処理技術、信頼できる処理業者の見つけ方、すぐに効果が出るゴミの削減方法、住民運動の留意点、産業廃棄物処理業者の経営改善手法、法改正情報など、ホットなニュースをお知らせしていきます。
(マガジンID:0000168298)
メールアドレス:  Powered by