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リサイクル幻想(その2)


 前回のメルマガでは、「リサイクル」が「環境に優しい行動」を意味する
非常に広い意味で使われてしまっている ということに苦言を呈しました。


 そして、日本では、学者や官僚といった、高度な教育を受けてきた人たちが
率先して、言葉の本来の意味をねじ曲げてイメージを流布(るふ)させている
こともほのめかしました。


 その最も確信犯的な結果が、現在の「リサイクル」という言葉なのです。


 今日たまたま手にした業界誌を読み、その思いをますます強くいたしました。


 某大学のチョー有名な教授がインタビューに答えて次のように力説していま
す。


(ここから)

(某チョー有名教授)

『「リサイクル」という用語を誤解していることもあります。リサイクルは狭
義では3Rの3番目ですが、広義では3Rを含めた意味で使われます。』


『リサイクル社会=循環型社会と言っても過言ではありません。なのに「リサ
イクルをけしからん」と言っている人は、3番目のリサイクルだけを捕らえて
「循環型社会はけしからん」と言っているのと同じです。』

(ここまで)


 チョー有名教授は、インタビューを受けるうちに気持ちが高まったのか、論
理に飛躍が見られます(笑)。


 「リサイクルをけしからん」と言っている人は、
 「リサイクルはけしからん」と言っているだけで、
 「循環型社会はけしからん」とは言っていません。


 教授にしてみれば、「リサイクル」をけなす人間は、「社会の敵」と同視で
き、「循環型社会を構築していく上での抵抗勢力」に思えてしまうのでしょう。


 しかしながら、教授自らが仰っているように、「リサイクル」は本来は3R
の中で最も劣後する手法。
 「リデュース」が1番、「リユース」が2番、その2つが使えないものだけ
「リサイクル」というのが、「循環型社会形成推進基本法」の基本原則です。


 しかしながら、
 「容器『リサイクル』法」にしてもそうですが、日本は「リユース」よりも
「リサイクル」に価値を置く国になってしまったようです。


 一体いつから、「リサイクルこそが至上命題」になってしまったのでしょう
か?


 このテーマを追求するだけで、社会派のドキュメント番組ができそうです。


 ちなみに、上に挙げた「循環型社会形成推進基本法」では、「資源の利用と
処分の基本原則」として、

 第1 リデュース
 第2 リユース
 第3 リサイクル
 第4 熱回収(!)
 第5 適正処分     と定められています。


 適正処分の上に熱回収を持ってきていること自体に欺瞞の臭いがします。


 熱回収は、単なる焼却と一緒です。
 後付けで、熱エネルギーのほんの一部を他に利用するだけです。
 どうしても、基本原則に入れたいのであれば、第5の「適正処分」に含める
か、その下に持ってきても良いくらいです。


 こうして先週からずっと苦言を呈していますが、私は「リサイクル反対主義
者」でも、「経済発展至上主義者」でもありません。


 むしろ、意味のある「リサイクル」や「熱回収」はドンドン推進すべきであ
ると思っています。


 私が気に食わないのは、上に挙げた某チョー有名教授のように、


 意図的に「リサイクル」の守備範囲を広げ、「リサイクル」こそが伝家の
宝刀であるかのように錯覚させ、国民を多様な問題解決の可能性から遠ざける
行為です。


 論理性を重んずるべき大学教授が、「平家にあらずんば人にあらず」よろしく
 「リサイクルを批判する者は、循環型社会の敵だ」という論調で、自説を述べ
立てるのもいかがなものかと思います。


 「環境に『完全に』優しいリサイクル」なんて都合の良いものは存在しませ
ん。


 エネルギーをかけてなんらかの加工行為を行うわけですから、「リサイクル」
という行為自体に環境に「優しくない」側面があるのです。


 そのため
 リサイクルによって「得られる利益」と「失う資源」を比較検討し、「得ら
れる利益」が多い場合のみ、リサイクルを進めるべきなのです。


 比較検討することなく、「リサイクル」の美名に引きずられ、逆に「資源」
を無駄遣いしている例のいかに多いことか・・・

 「リサイクル」をカモフラージュの道具にするな!

 今月のシャウトでした。

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