◆統計資料から読み解く産廃処理業界の実情(最新版)
ちょうど1年前に取り上げた統計資料の最新版が環境省から発表されていま
すので、その資料を元に、産廃処理業界の実情を眺めてみます。
資料は下記のURLからPDFファイルをダウンロードできます。
平成16年度
産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況
http://www.env.go.jp/recycle/waste/kyoninka/kyoninka_h16.pdf
この資料は、「産業廃棄物処理施設の設置」と「産業廃棄物処理業の許可」
の2つの内容からなる資料です。
これらを読み解くことによって、日本の「産業廃棄物の処理能力」と「産業
廃棄物処理市場の成長性」をつかむことができます。
今回のメルマガでは、「(日本全体の)産業廃棄物の処理能力」にスポット
を当てたいと思います。
同資料によると、平成17年4月1日現在の産業廃棄物処理施設数は、
23,091施設で、前年度の22,421施設より、670も増加していま
す。
この「産業廃棄物処理施設」とは、「中間処理施設」と「最終処分施設」の
総称のことなので、施設の種類ごとの増減を見てみましょう。
H15年度 H16年度
最終処分場 2,490件 ⇒ 2,478件
中間処理施設 19,931件 ⇒ 20,613件 となっており、
中間処理施設のみが増加していることが分かります。
「中間処理施設」と一口に申しましても、「焼却施設」や「破砕施設」など
様々な種類の施設があります。
環境省の発表資料によると、
「中間処理施設」の中で、「廃止」件数を50以上上回る「新規設置」が
あった施設は、
「廃プラスチック類の破砕施設」と
「木くず又はがれき類の破砕施設」の2つだけです。
その他の施設は、純減か、1%程度の微増にとどまっています。
平成15年度と平成16年度の施設数を比較すると、
廃プラスチック類の破砕施設は、203件増加し、1,161件
木くず又はがれき類の破砕施設は、517件増加し、7,765件
いったいなぜ、この2つの施設だけ急増したのでしょうか?
その答えを一言で言うと、
「資源市場の変化」ということになります。
・旺盛な燃料・原料需要に応えるため、廃プラスチック類の中国への輸出が
活発化
・バイオマスエネルギーとして、木くずの燃料や原料としての再利用が注目を
集めている
この2つの理由から、
廃棄物を「処理」するためではなく、「資源として再利用する」ために、
製品の加工施設として、上記2つの「廃棄物処理施設」の導入が進んだわけ
です。
そういった面で資源の有効利用が進むのは結構なことなのですが、問題は、
原料すなわち廃棄物の供給量はほとんど変化していないということです。。
バックナンバー 「最新版産業廃棄物の発生状況」
http://www.office-onoe.com/magazine/2007/03/post_68.html
処理施設はドンドン増えていくのに、肝心の廃棄物の量は変化なし・・・
資本主義経済にはつきものの「需要と供給のミスマッチ」が起こっている
のが日本の現状です。
ただし、中国の「需要」も、最近は輸入(日本から見ると輸出)より、国内
産のプラスチックにシフトしつつありますので、今後はこの「需要と供給の
ミスマッチ」が更に加速することも考えられます。
そうなると・・・
「需要」に見合わない「供給」体制が仇となり
バタバタと処理業者が倒産・・・
こういったシナリオも十分想定されます。
まだ、ほとんど誰も口にしていない話です。
私の杞憂に終われば良いのですが、尻馬に乗る投資が多い昨今、事業がうま
くいかない可能性も考えておいた方が安全と思います。
次回は、「産業廃棄物処理市場の成長性」について