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産業廃棄物処理市場の成長性(その2)

 前回のメルマガでは、

1.産業廃棄物処理業の許可件数の伸びは横ばい状態
2.都心近郊への処理施設の設置が進みつつある

 ことをお話いたしました。


 ただ、それはまだまだ か細い動きであり、この傾向を定着させるためには、
この状態を継続させていく必要があります。


 そのために、廃棄物処理業界が絶対に避けては通れない道がある・・・


 今回はその続きとなります。


 過去2週のメルマガに引き続き、環境省の統計資料を材料にお話を進めてい
きます。

 平成16年度
 産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況
 http://www.env.go.jp/recycle/waste/kyoninka/kyoninka_h16.pdf


 
 上記の資料の8pをお開きください。


 「3.行政処分等について」という資料があります。


 この資料によると、
 平成16年度の業の許可取消件数は、前年度の666件から約40%増の
945件となっています!


 「業の許可取消」というのは、当初は適法だった許可を、その後の事情の
変化により、行政が強制的に取り消す ことを言います。


 ここで言う「その後の事情の変化」とは、会社が不法投棄をしたり、役員が
法律で定める欠格要件に該当するように至った場合のことを言います。


 当初は適法だった許可が、会社のその後の不行跡により、許可を与えておく
ことが不適切となったため、有無を言わせず取消! という、恐ろしい強権
発動措置なのです。


 その強権発動措置が、対前年度比40%増という恐るべきペースで増加して
います。


 ちなみに、平成15年度と平成14年度を比較すると、平成15年度も平成
14年度の398件から約50%も増加していました。


 高度経済成長期も真っ青の驚異的な成長?率を見せています。


 こうなると


 処理業者のほとんどはブラックなのか?
 許可取消とは現代の「魔女狩り」なのか?

 という疑問が起こってしまいます。


 真相は一体どちらなのか!?


 まず、「処理業者のほとんどはブラック」というのは誤りです。


 もしそうなら、処理業の許可件数25万件に対し、取消件数が900件と、
たったの0.36%にとどまるはずがありません。
 

 「処理業者のほとんどがブラック」であるなら、
 最低でも許可取消件数が毎年1万件程度に上るはずです。


 それがたったの0.36%にとどまっているのですから、業界全体で考える
と、ブラックな業者はほんの一部   と言っても良いかもしれません。


 ただ、許可取消された業者が全て「ブラック」かと言うと、決してそんなこ
とはなく・・・・


 「ブラック」でも取消されない(できない?)業者


 逆に


 ずっと「ホワイト」だったのに、知らない間に「ブラック」にされてしまっ
た会社がたくさん存在するからです。

 こういった統計には上がってこない現実があります。


 そのため、許可取消件数がこれほど増加し続けているのは
 「現代の魔女狩り」と言える面があります。


 なぜなら、


 「贈賄」や「談合」など、刑罰の確定に長い期間が必要な犯罪の場合は、
司直に捕まった経営者をアッサリと首切り


 その結果、法律上は会社の役員に欠格者がいなくなったため、有罪の判決が
出ようとも、会社が有する許可にはお咎めなし。


 他方、たまたま役員がプライベートの時間帯に車を運転していて、人身事故
を起こし、禁錮刑が確定してしまった場合は、


 会社が気づいたときには、役員に法律上の欠格要件者が存在する状態となっ
ているため、人身事故を起こした役員に連座して、会社自体の業の許可取消


 これがほとんどのケースです。


 贈賄だと、落ち着いて(?)トカゲの尻尾切りができるのに、
 役員の私的な犯罪の場合は、気づいた時には「許可抹殺」


 無論、「人身事故」も重大な犯罪には違いありませんが、役員が起こした犯
罪のうち、どちらが社会に対してより大きな害悪をもたらすのでしょうか?


 「法律はそれを知っている者の味方である」と言いますが、
 法律の規定を厳格に運用しすぎると、法律本来の目的から逸脱した結果を招
くことがあります。


 現状では、「取消さなければならない」という一文のみに呪縛され、
 本当に罰するべき「巨悪」ではなく、「小物」あるいは「過失犯」を大量に
見せしめ処分している   と言うと言い過ぎでしょうか?


 もっとも、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」で定める欠格要件は、
「かぐや姫」のように無理難題を押し付けているわけではありません。


 「(過去5年間に)禁錮以上の刑罰に処せられたことがないこと」
 「暴力団関係者が支配する会社でないこと」 など


 普通の生活を送る人にとっては、ごくごく当たり前の話です。


 ですから、社会人として一般的な常識を有する人にとっては、影響がほとん
どない条件ばかりです。


 問題は、自分以外の人間、他の役員や従業員などがプライベートの時間に
行う犯罪の場合、会社は防ぎようがありません。


 社長自らが他の人間を24時間監視できないからです。


 「欠格要件」を必要以上に恐れる必要はありませんが、
 「我が社の社員は絶対に違法行為をしない」という理想だけでも危険です。


 内外に自社の有様を適切に情報公開しつつ
 関係者が違法行為を行うリスクを極限まで低減し
 一度、関係者の違法行為が発覚すると、迅速にしかるべき措置を取る。


 こういった「常在戦場」の心構えが必要な業界となりました。

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