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一国二制度


 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」を読み解く上で、もっとも難解な
点は、「一般廃棄物」と「産業廃棄物」の扱いの違いです。


 具体的には、

 一般廃棄物は、市町村(廃棄物処理法第6条の2)
 産業廃棄物は、事業者(廃棄物処理法第3条)     に
 それぞれ処理責任があると定められています。


 「ふーん それぞれの廃棄物ごとに処理責任が分かれているんだから
  なにもややこしいことはないじゃない」


 いえいえ 問題はそんな単純なことではありません。


 法律的には、一般廃棄物と産業廃棄物の区分を一刀両断することは簡単です。


 しかし、区分と、実際にその廃棄物が処理できるかは別問題です。


 それはなぜか?


 その疑問にお答えする前に、まず、廃棄物の分類の仕方をご説明します。


 日本の法律では、「産業廃棄物以外の廃棄物」を、「一般廃棄物」という 
と定められています。


 そのため、産業廃棄物か一般廃棄物かを判断するときにすべきなのは
 「その廃棄物が産業廃棄物に該当するか否か」を見極めることなのです。


 これは、当社の製造工場から発生した包装用紙(プラスチック製)だから、
事業活動に伴って生じた廃棄物になるな。
 ということは、この包装用紙は産業廃棄物の廃プラスチック類だな。


 あなたも一々言葉にはしないかもしれませんが、こういった論理展開を踏ま
えたうえで、日々産業廃棄物に接しているわけです。


 しかしながら、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」が一筋縄でいかない
ところは


 「事業活動に伴って生じた廃棄物」=「産業廃棄物」ではない場合があるこ
とです。


 紙くず、木くず、繊維くず、動植物性残さ、動物系固形不要物
 動物のふん尿、動物の死体 の 
 
 7種類の産業廃棄物については、特定の業種から発生した廃棄物のみが産業
廃棄物になる と法律で決められています。


 ですから、同じ紙でも、建設工事などから発生した紙くずは産業廃棄物
            オフィスから発生したメモ用紙は一般廃棄物  に
 なります。


 もっとも、「紙くず」なら、産業廃棄物か一般廃棄物かを区別することは
簡単ですし、紙くずの処理先に困ることもほとんどありません。
 ほとんどの会社の場合、紙くずを一般廃棄物として捨てるよりも、古紙回収
業者に引き取ってもらっているのではないでしょうか。


 では「木くず」だと、どうでしょう?


 産業廃棄物を定義している、廃棄物処理法施行令第2条にはこう書かれてい
ます。


 木くずとは

建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴って生じたものに限る。)
木材又は木製品製造業(家具製造業を含む。)
パルプ製造業及び輸入木材卸売業に係るもの
PCBが染み込んだもの            と定められています。


 木くずの場合は、産業廃棄物となるハードルがやけに高いと思いませんか?


 建設工事の他、非常に限定された業種から発生した木くずしか産業廃棄物に
ならないんですね。


 造園屋さんがお客さんのところで剪定した枝は、建設工事から発生した木くず
ではないため、事業活動に伴って生じた木くずであるのに、一般廃棄物になり
ます。


 剪定枝の他にも、木製パレットも一般的なイメージとは異なり、一般廃棄物
になります。
 理由は上記と同様の理由になります。


 そこで
 「木製パレットは一般廃棄物なので、市町村のごみ処理施設に持ちこもう」と
各市町村の施設に木製パレットを持ち込んだとします。


 市町村が「ハイ かしこまりました」と、一般廃棄物である木製パレットを
引き取ってくれれば問題はないのですが、ほとんどの場合、パレットをそのま
ま焼却炉に投入できないため、受け取ってくれないことが多々あります。


 そんな時には


「市町村で引き取ってくれないなら、産業廃棄物処理業者に頼むしかないけど
 それでも良いのか?」と質問してみてください。


「・・・・・・」


 まず回答してくれないと思います(笑)。


 法律の規定を完全に遵守すると、廃棄物が適切に処理されない


 こういった本末転倒なやり取りが、半ば公然とされていたのが実情です。


「これではイカン」ということで、数年前から「木くず」の定義の見直しが進
められてきました。


 ようやくにして、中央環境審議会「の」廃棄物・リサイクル部会「の」
廃棄物の区分等に関する専門委員会(長い・・・)での議論が一区切りつき、
廃パレット等の産業廃棄物への移行のめどが立ちました。


 平成19年5月11日(金)から6月10日(日)までの間、
 「木くずの区分」などに対する国民からの意見が募集されています。

 http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=8352


 「国に一言申しあげたい」という方は、パブリックコメントを送ってみては
いかがでしょうか。


 今回は、廃パレットの他、リース業から発生した木製家具も産業廃棄物に
移行する予定です。


 「これで『木くず』の解釈をめぐる問題は全て解決した!」とはまだまだ
言えませんが、少なくとも一歩前進したのは事実です。

「よく分かる!!廃棄物問題」
元産廃Gメンの行政書士による、廃棄物問題の解説。廃棄物処理法の問題点、ゴミ処理技術、信頼できる処理業者の見つけ方、すぐに効果が出るゴミの削減方法、住民運動の留意点、産業廃棄物処理業者の経営改善手法、法改正情報など、ホットなニュースをお知らせしていきます。
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