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事業者の処理責任とは

 


 ここ2週間、原稿の執筆が忙しく、すっかりとメルマガの発行から遠ざかっ
ておりました。


 本当は今週も発行しないつもりだったのですが、ありがたいことに、「メル
マガをいつも楽しみにしています」というお便りを頂戴しましたので、久しぶ
りに発行する気になりました(笑)。


 K様、どうもありがとうございました。


 K様からは、激励の他にご質問もいただいたのですが
 そのご質問には、廃棄物処理法上、非常に重要な内容が含まれていましたの
で、皆様ともシェアしたいと思います。


 そのご質問は、一般廃棄物と産業廃棄物の区分に関するものでした。


 前回のメルマガでは、

 一般廃棄物は、市町村(廃棄物処理法第6条の2)
 産業廃棄物は、事業者(廃棄物処理法第3条)に
 それぞれ処理責任がある とご説明しました。


 産業廃棄物は、事業活動に伴って生じた廃棄物のことですね。
 その中でも、「紙くず」「木くず」「繊維くず」等の7種類の産業廃棄物に
ついては、特定の業種から発生した「木くず」しか産業廃棄物にならない

 ということも、前回のメルマガでお話しました。


 「業種限定」があるため、普通のオフィスビルから発生した紙ごみなどは、
産業廃棄物ではなく「一般廃棄物」になります。


 では、「うちのオフィスから出た紙ごみは一般廃棄物なので、市の焼却炉に
無料で引き取ってもらえる!」かというと


 ほとんどの場合、そんな親切な扱いは期待できません。


 なぜなら、オフィスからでた紙ごみは、産業廃棄物ではないけれど、
 「事業」活動に伴って発生した廃棄物に他ならないからです。


 こうした産業廃棄物ではない事業系の廃棄物のことを
 「事業系一般廃棄物」と呼ぶことがあります。


 「事業系一般廃棄物」の処理責任は誰にあるのか?


 一般廃棄物なので、市町村だろ!


 いいえ


 実は、その事業者自身に処理責任があるのです。


 え?でも、「一般廃棄物は市町村に処理責任あり」って、さっき言ったばか
りじゃないか


 はい この場合の一般廃棄物とは、事業系一般廃棄物以外の一般廃棄物
 言い換えると「生活系の一般廃棄物」のみを指します。


 その根拠は、産業廃棄物の処理責任者の根拠でもある、廃棄物処理法第3条
に書かれています。


 廃棄物処理法第3条

「事業者は、その事業活動に伴って生じた「廃棄物」を自らの責任において
適正に処理しなければならない」


 「廃棄物」という部分に注目してください。


 ここには「産業廃棄物」とも、「一般廃棄物」とも書いていませんので、
 事業活動に伴って生じた廃棄物は、一般廃棄物、産業廃棄物の別を問わず、
すべて「事業者」に処理責任がある ということになります。


 この規定があるため、事業系の一般廃棄物は無償で引き取ってくれないわけ
ですね。
 最近は、生活系の一般廃棄物であっても、ごみ減量化を推進するため、引き
取りが有料制に変わりつつありますが・・・・


 もちろん、市町村の焼却炉で、一般廃棄物と同じ性状の産業廃棄物を処分す
ることは違法ではありません。
 廃棄物処理法第11条第2項で、そのことが明文化されています。


 こういった事情から、事業系一般廃棄物の扱いに、地域差が生じてしまった
わけです。


 例えば、オフィスから発生したビニール袋


 外観や使い方は、家庭から排出されるビニール袋とまったく一緒


 しかし、事業活動に伴って発生したビニール袋なので、産業廃棄物だ

 だから、うちの市の焼却炉では受入れられない

 ここは、一般廃棄物専門の焼却炉だからな!


 悲しいことに、法律的には正論です・・・


 極端な話をすると、れっきとした一般廃棄物である紙ごみでも
 事業系一般廃棄物だから事業者自身で処理しなさい!


 法律の構成上は、そんな理屈が成り立ってしまいます。


 今回のお話は、法律を面白おかしく茶化しているのではなく、
 あなたの周囲の市町村で実際に起こるかもしれない(あるいは起こっている)
お話です。


 ほとんどの市町村は、事業系一般廃棄物を搬入する際、処理料金さえ支払え
ば、今までどおり受入れてくれることでしょう。


 しかし、一部の地方では、産業廃棄物と一般廃棄物を厳格に解釈し、オフィス
から出た包装容器などの受入を拒否し始めたところもあるようです。


 「ごみの減量」が至上命題になっていますので、少々理不尽ですが、
いたしかたない面もあります。


 社会保険庁が使った、納付率アップの手口と同じ匂いがいたしますが・・・

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元産廃Gメンの行政書士による、廃棄物問題の解説。廃棄物処理法の問題点、ゴミ処理技術、信頼できる処理業者の見つけ方、すぐに効果が出るゴミの削減方法、住民運動の留意点、産業廃棄物処理業者の経営改善手法、法改正情報など、ホットなニュースをお知らせしていきます。
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