メルマガバックナンバー > どうする!?ごみ屋敷

どうする!?ごみ屋敷


 最近、TVで面白おかしく「ごみ屋敷」が取り上げられる機会が増えました。


 敷地いっぱいにごみを積み上げて、周囲との交渉を完全拒絶
 近隣の住民は大迷惑
 行政は何をしているんだ!


 という、「公正中立」というよりは、多分にアジテーションの意図が見え隠
れする報道が多いです。


 この「ごみ屋敷」の問題
 TVが断じるほどには、解決は容易ではありません。


 「ごみ屋敷」にお住まいの方にとっては、「ごみ」ではなく、「特別なもの」
のようです。


 少なくとも、「ごみ」とは認識していない人がほとんどです。


 「でも、誰が見ても『ごみ』は『ごみ』だろ!」


 ほとんどの人、常識・良識のある人はそう思います。


 法律的にも、それは正しい見解です。


「廃棄物になるんだったら、廃棄物処理法で取り締まればいいんじゃないか?」


 それが・・・
 簡単には取り締まれないのです・・・


 まず、廃棄物処理法は廃棄物を規制する法律ですので、廃棄物ではないもの
に対しては、神通力を発揮することができません。


 え!でも、誰が見てもごみじゃないか!


 はい 確かにそのとおりですが、その前に、そのごみの所有者、または占有
者の意思を確認する必要があります。


 「ごみの所有者自身が、ごみと思っている」

 この場合は、まったく悩むことなく、「ごみ」と断じることが可能です。
 廃棄物処理法を駆使すれば、なんとか迷惑な行為を止めさせることができる
かもしれません。


 では、常識からすればごみだけど、「それの所有者は、ごみと思っていない」
場合はどうでしょうか?


 この場合には、現在の日本の法律制度の下では、一概にごみと決め付けるこ
とはできません。


 国(旧厚生省)は、
 廃棄物とは
1.占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売却することができない不要物
2.占有者の意思
3.そのものの性状  

 などを「総合的」に勘案すべきものであって、
 排出された時点で客観的に廃棄物として観念できるものではない

 という判断基準を、廃棄物処理法制定直後から一貫して示しています。
 この基準のことを、「総合判断説」とも呼びます。


 ただ、上記の「総合判断説」でも、1,2,3のすべてにあてはまらないと
いけないと言っているわけではなく、占有者が「ごみではない」と思っている
だけで、「廃棄物ではない」となるわけではありません。

 「総合判断説」を用いて、ごみ屋敷のごみが廃棄物になるかどうかを考えて
みると、

1.占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売却することができない不要物
  ⇒ 実際に占有者がごみを利用していないのであれば、この条件は該当
    しそう

2.占有者の意思
  ⇒ 本人は「ごみではない」と主張しているので、この条件は判断基準の
    要件に該当しない

3.そのものの性状
  ⇒ 明らかにごみだな

 と考えることができるので、1〜3の要件のうち、1と3には該当します。


 そうすると、「総合的」に判断すると、「ごみ屋敷のごみは廃棄物である」
と判断することができそうです。


 そうだろ!廃棄物になるんだったら、廃棄物処理法で解決できるだろう


 残念ながら、問題はそんなに簡単に解決しません・・・・


 (次回に続く)

「よく分かる!!廃棄物問題」
元産廃Gメンの行政書士による、廃棄物問題の解説。廃棄物処理法の問題点、ゴミ処理技術、信頼できる処理業者の見つけ方、すぐに効果が出るゴミの削減方法、住民運動の留意点、産業廃棄物処理業者の経営改善手法、法改正情報など、ホットなニュースをお知らせしていきます。
(マガジンID:0000168298)
メールアドレス:  Powered by