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不法投棄に象徴される産廃処理業界の現実

 先日、財団法人産業廃棄物処理事業振興財団の部長さんが、当事務所に
いらっしゃいました。

 http://www.sanpainet.or.jp/


 たまたま関西方面に出張の予定がおありになり、当事務所にわざわざお越し
くださいました。

 もちろん、その部長さんは、私の個人的な友達だったわけではありません
 (笑)


 お話の趣旨は、このメルマガでも取り上げたことのある「優良事業者評価
制度」のPRのことでした。


 私としても、PRは意義のあることだと思っていますので、ご協力したいと
即答いたしました。


 さて、その際に出た話題の中で、「現在の産業廃棄物処理業者に欠けている
資質」というものがありました。
 

 偶然ですが、現在執筆中の書籍原稿の内容と共通する話題だったので、執筆
の過程で発見した事実とからめて、メルマガでも取り上げてみたいと思います。

 まず今回は、産業廃棄物処理業界に対する一般的なイメージと、不法投棄の
実態との関連性です。


 環境省が毎年行っている「産業廃棄物の不法投棄等の状況」調査という
ものがあります。

 http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=7743


 この統計調査は、1件当たりの投棄量が10トン以上のものしか調査対象と
しない(特管物は10トン以下でも集計対象)など、不法投棄の実態を正確に
反映したものではありませんが、大規模な不法投棄のトレンドを示すことには
成功しています。


 投棄件数558件の内訳を行為者別に見てみると

1.排出事業者 228件(40.9%)
2.無許可業者  85件(15.2%)
3.許可業者   52件( 9.3%)  


 投棄された廃棄物の総量172,179トンの内訳は

1.無許可業者 82,833トン(48.1%)
2.許可業者  29,017トン(16.9%)
3.排出事業者 26,635トン(15.5%)


 投棄量は、許可業者の方が排出事業者より多くなっていますが、投棄件数は、
排出事業者によるものが突出しています。


 そのため、統計的には、不法投棄を行っているのは、「排出事業者」と
「無許可業者」がほとんど言えるでしょう。


 ですから、思ったより、「許可業者」による不法投棄事件は少ないのです。

 もっとも、少ない件数であるにもかかわらず、2万9千トンも不法投棄され
ていますので、一度許可業者が不法投棄に手を染めると、大規模な不法投棄に
発展しやすいようです。


 このように、違反をするのは許可業者以外の方が多いわけですので、
 欠格要件の強化を始めとする、許可業者への締め付けを強化するだけでは、
 不法投棄を効果的に抑制することは困難です。


 排出事業者や法律を無視するアウトロー対策を充実させることも必要です。


 とは言え、一般的な国民にとっては、産業廃棄物処理業の許可の有無に関わ
らず、産業廃棄物を扱う業者は、すべて「産廃業者」となってしまいます。


 許可業者が、「不法投棄をするのは無許可業者やアウトローばかりなんだ。
我々と一緒にしないでくれ!」と力説しても、一般的な国民には、
「産廃業者」というだけで、恐怖と敬遠の対象となってしまいます。


 また、「許可業者」の体を装う「無許可業者」によって、無責任な不法投棄
が横行し、産廃業者に対する怒りと恐怖が日々拡大再生産され続け・・・


 現在に至っては、「産廃業者」と聞けば、条件反射的に「不法投棄」を連想
する人が多くなってしまいました。


 悲しいことですが、これが日本の大部分の産廃業者を取り巻く現実です。


 いくら適切な処理を心がけていても、心ない同業者(無許可業者)の存在に
よって、不法投棄とは無縁の健全な会社に対するイメージまでが悪くなってい
きます。


 こうなると、下りのエスカレーターに乗りながら、必死に上の階を目指す
ようなものです。


 産業廃棄物処理施設を設置する場合などは特にそうですが、産業廃棄物処理
業を始める場合、ゼロからの出発ではなく、マイナスからの出発と思った方が
確かです。


 非常に残念な事実ではありますが、現実は現実として認識しておかねばなり
ません。

(次回に続きます)

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