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究極の不法投棄対策(その2)

 前回のメルマガは、鳥居が不法投棄の抑止に効果を発揮したというお話
でした。


 今回のメルマガでは、その理由を考察したいと思います。


 結論から申し上げると、
 鳥居によって不法投棄が減少した原因は、人間の無意識の働きにあります。


 無意識とは言っても、「オカルト」や「オーラの泉」とは、まったく関係が
ありません(笑)。


 正確に言うならば、鳥居自体に効果があるわけではなく、
 ゴミを捨てようとした人自身が鳥居に対して、何らかの感情を抱き、不法
投棄を躊躇するようになったということです。


 このような無意識の話は、廃棄物問題とはあまり関わりがなさそうに見えま
すが、実は大いに関係のある話です。


 このメルマガでも、以前「『廃棄物』という言霊(ことだま)」で、お話
したように、意識下に深く刷り込まれた情報によって、我々は、廃棄物に
対して、条件反射的に何も考えずに行動することが多いものです。

 バックナンバー  「廃棄物」という言霊(ことだま)
 http://www.office-onoe.com/magazine/2007/03/post_67.html


 先祖から連綿と受け継いできた文化や教育の結果は、我々が意識している以
上に、我々の行動に強い影響力を持っています。


 例えば、日本では、家に上がるときは、靴を脱いで上がるのが常識ですが、
他の国ではそうではありません。


 しかし、日本で生活している限りでは、毎日ほとんど意識することなく、
当たり前のように靴を脱いで家に上がります。


 でも、日本の家屋を初体験するアメリカ人の場合なら、何も注意されなけれ
ば、ついつい土足で上がってしまうことでしょう。


 それは、そのアメリカ人に、「家は靴を脱いで上がるもの」という、思考の
枠組みがないからですね。


 そのため、鳥居が設置してあったとしても、それを初めて見る外国人は、
「日本らしさを象徴する建造物だ」と思うことがあっても
「鳥居の前で罰当たりなことはできないな」なんて、思うことはありません。

 鳥居を知らない人は、元々、そのような思考体系をしていないからです。


 しかし、日本人、あるいは日本の教育を長期間受けた人の場合は、そうでは
ありません。


 「鳥居は神聖なもの」
 「鳥居に小便をかけるなんてもっての他」
 という思考体系が、無意識下に強固に構築されています。


 そのため、今回の、鳥居によって不法投棄を抑制するという事例は、日本人
の鳥居に対する思考体系をうまく活用した、画期的なアイディアだと思います。


 今後、少子高齢化が進み、外国からの移民が増え、外国語しか話せない隣人
がいることが当たり前の時代になると、鳥居の神通力も効果を発揮しなくなる
かもしれません。

 思考体系がまったく異なるからですね。

 また、「ゴミを捨てるな」と書かれた看板は

 「過去、同じ場所でゴミの不法投棄があった」
 「監視の目が行き届かないので、捨てやすい場所だ」
 という、看板を設置した目的とは相反する印象を周囲に与えてしまいます。

 看板を設置することで、新たな不法投棄の誘い水になることがあります。

 不法投棄対策としては、
 「看板」という、意識(理性)に訴えかける内容のものよりも、
 「鳥居」のような、人が抗えない力を持つ「無意識」に働きかける道具の方
が、効果を発揮しやすいようです。


 とは言え、鳥居のように効果的な道具を、すぐに見つけることも困難ですの
で、根気強く「意識」に訴えかけ、「無意識」下に刷り込むことも必要となり
そうです。


 ちょうど、大昔に、「鳥居に罰当たりなことはできない」という、価値観を
浸透させた時のように・・・

「よく分かる!!廃棄物問題」
元産廃Gメンの行政書士による、廃棄物問題の解説。廃棄物処理法の問題点、ゴミ処理技術、信頼できる処理業者の見つけ方、すぐに効果が出るゴミの削減方法、住民運動の留意点、産業廃棄物処理業者の経営改善手法、法改正情報など、ホットなニュースをお知らせしていきます。
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