リンゴ大量不法投棄に見る日本の農業問題

vol.122 「ゴミ屋敷」強制撤去も 政府が検討?

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09/02/13号
 
  2月1日付けの日本経済新聞朝刊に、
 「『ゴミ屋敷』強制撤去も 政府が有識者会議、自治体支援など検討へ」
 という記事が載っていました。

 http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20090201AT1G3102B31012009.html


 以下、日本経済新聞記事からの抜粋です。
 政府は31日、住民が敷地内にゴミをため込む「ゴミ屋敷」などが周辺の環境 に悪影響を及ぼしている問題の解決に乗り出す方針を固めた。2009年度中に 有識者会議を設置し、問題を抱える地方自治体への支援策を検討。個人所有 地内のゴミを強制撤去できるルールなど10年度までに具体策を取りまとめる 考えだ。  有識者会議がまとめる対策には、廃棄物の不法投棄や雑草繁茂がひどい空 き家や空き地などへの対応も含める見通し。政府は「治安や景観の悪化、周 辺の不動産価値の下落をもたらす」(幹部)と見ており、問題解決に向けて 国や地方自治体が積極的に関与する必要があると判断した。
 冒頭の「政府」という表現が非常に曖昧です。  各省のHPの「記者発表内容」を調べてみましたが、それらしき発表があり ませんでした。  環境省でも、経済産業省でも、内閣府でも、首相官邸でも、国土交通省でも ないようです。  日本経済新聞が独自に取材した結果なのかもしれません。  土曜日(1/31)に「幹部」がコメントした形になっていますので、本当に 「政府」での決定事項なのか疑問に思います。  ひょっとすると、この記事でアドバルーンを揚げて、世論の反応を見ようと いうことなのかもしれません(笑)。  ニュースソースがよくわからないので、真面目に論評する意義がないのです が、せっかくの機会なので、ゴミ屋敷問題について書いてみます。  正直なところ、ゴミ屋敷のゴミを撤去するのに国が関与するというのは、明 らかに行き過ぎた話です。  国が予算を使って取り組むべき問題ではありません。国が取り組むべきこと は他に山積みです。  ゴミとは言え、それを集めた本人が「財産だ」と主張している以上、国がそ れを強制撤去するには法律の根拠が必要となります。  このように、できない理由を挙げるとキリがありませんので、どうすれば ゴミ屋敷問題を解決できるかを考えてみます。    ゴミ屋敷問題で一番ネックになっているのは、上述したように、「行政が勝 手にゴミを撤去できない」という点ですので、そこを法律で正当に根拠付けれ ば、手続き的には可能となります。  もちろん、国会審議が必要になりますので、相当の紆余曲折が予想されます が、大規模不法投棄事件が発覚した直後など、タイミングによっては、支障な く可決成立してしまう可能性もあります。  各地のゴミ屋敷を全国一律で解決したいのであれば、「廃棄物処理法」を 改正して、「廃棄物」の定義を今以上に明確にし、「悪臭などで周辺の生活 環境に悪影響がある場合は、行政が代執行できる」くらいの強硬な規定にし ないといけません。  現在の法体系では、日経の記事にもあるように、  「ゴミではなく、財産なんだ」と主張されると、いくら行政と言えど、勝手 にそれを撤去することはできません。  現行法を「柔軟に」解釈するだけでは、今までと同様、個人の財産権という 憲法上大いに尊重すべき「障害」が残り続けます。  日経が言う「政府」の考えでは、「有識者会議においてルール作り」をする ということですが、個人の権利を、法律ではなく、単なる「ルール」で規制し てはなりません。  もちろん、「法律で決めたらなんでもできる」というわけでもありませんが、 少なくとも、ゴミの強制撤去をする場合には、法律の根拠が絶対に必要です。  と、ここまで書いて気がつきましたが、現在の廃棄物処理法でも、一定の 条件下では、ゴミの強制撤去を行うことは可能です。  ただし、「不法投棄」や「放置すれば人の生命・財産を侵害するかもしれな い」などの、緊急に撤去する必要がある場合に限定されます。  ゴミ屋敷のゴミは、「不法投棄」でもありませんし、人の生命を脅かすほど 危険でもありませんので、行政といえど、勝手に強制撤去できないわけですね。  現実的な打開策としては、廃棄物処理法の規定を整備し、ゴミ屋敷の住人に 対して「措置命令」をかけられるようにする方法が考えられます。  措置命令に従わない場合は、行政が代わりにゴミを撤去するという「代執行」 が可能となるからです。  日経では、「有識者会議でルール作り」と一言で言い切っておりますが、  実際には上記のような手順で考えられているのかもしれませんね。