リンゴ大量不法投棄に見る日本の農業問題

vol.126 リンゴ大量不法投棄に見る日本の農業問題

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09/03/27号

   毎日新聞の報道によると、  
 青森県五所川原市と板柳町の境界を流れる十川の河原4カ所で、リンゴが 不法投棄されているのが見つかった。
 加工用に回った大量のリンゴを処理しきれなかったり、低価格で出荷できな くなってしまい、在庫を抱えた農家が廃棄したとみられている。
 とのことです。


 いかなる理由にせよ、廃棄物を不法投棄してはならないのは当然ですが、


 丹精込めて作り上げたリンゴを、大量に不法投棄せざるを得なかった農家の
心情もよくわかります。


 農業の場合、生産量を急に増減させることができない自然任せの産業ですの
で、ある年に作物を大量に作りすぎたからといって、工業製品のように在庫を
抱え続けることはできません。


 逆に、「この野菜は現在の市場で大人気だから、もっと出荷を増やそう」と
思っても、生産量を増やすには1年前から準備する必要がありますので、そう
簡単には増やせません。


 今回の事件のように、リンゴが大量にできた年は、全てのリンゴをそのまま
市場に出荷すると、需要と供給のバランスが崩れ、せっかく出荷したリンゴの
値段が暴落してしまいます。


 それを避けるために、リンゴの出荷量を絞ることになるわけですが、問題は
出荷されなかったリンゴの処分・・・


 果物の場合は、米のように貯蔵するわけにもいかず、できるだけ早く消費す
る必要がありますが、そう簡単には消費してくれる人や会社が見つからないの
が現実。


 そうして、消費先が見つからないまま手元に残った大量のリンゴ
 やむにやまれず、河原に捨てたというところでしょうか。


 食料問題や資源問題を考える上では、農業の生産力を真剣に考える必要があ
るわけですが、日本の農業政策を見ていると、「減反の強制」など長期的な
展望に立っていない政策ばかりが目立ちます。


 今回の報道のような食料の不法投棄をなくしていくためには、農業政策の整
備以外にも、食品が廃棄物になった場合の再利用方法をもっとたくさん増やし
ていく必要があるでしょう。


 食品はすぐに腐敗してしまうため、それが廃棄物になった場合、できるだけ
その地域で速やかに再利用、あるいは処分してしまうことが重要です。


 ある意味、廃棄物としての「地産地消」ですね。


 新聞報道によると、出荷できないリンゴは「堆肥化」を奨励されていたよう
ですが、美味しいリンゴを堆肥にしか使わないのも もったいない話です。


 人が食べられないようなリンゴだけを最終手段として堆肥化し、
 それ以外の食べられるリンゴは、人や動物に食べてもらう


 こんな方法が、環境保全という見地からは最適解となるのではないでしょうか。


 問題は、それをどうやって実行していくかですが


 平常時から、こういった余剰食品を消費してくれる受け皿を作っておくことが
必要となります。


 賞味期限が迫った食品を譲り受け、それをホームレスの人に配布するという
活動をしているNPOが既に存在しています。先進事例として、大いに参考に
なるのではないでしょうか。

 ※NPO法人 セカンドハーベストジャパン


 リンゴなどの果物の場合、上述したようにすぐ痛んでしまうため、迅速な消
費がキモとなります。


 そのため、あまりにも大量に出荷しない果物があると、人間に食べてもらう
だけでは、それを消費しきれないだろうと思います。

 
 そのような場合には、食品を豚や鳥の飼料として加工することを検討してみ
てはどうでしょうか。


 リンゴはカレーに入れると美味しくなるようですので、飼料の中に配合する
と、家畜の食欲も増すのではないでしょうか(笑)。 



※関連書籍

 リンゴが食べたくなってきました(笑)

『奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録』