vol.129 廃プラスチックの最新輸出状況
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09/05/01号
昨年後半に急失速した廃プラスチックの輸出ですが、今年に入り復調の兆し を見せ始めました。 今年の2月以降、PE、PS、PVC、PETなどのすべての廃プラスチッ クにおいて、輸出量が2か月連続で増加し続けました。 特に、PETくずなどは前年同月比で8.6%増と、好調だった2008年度前半 の輸出量を上回る盛況ぶりです。 廃プラスチックの輸出量「だけ」を見ると、今年の廃プラスチックの輸出量 は、前年同月時の輸出量を既に上回っています。 にわかには信じがたい話かもしれませんが、財務省が毎月発表する 「貿易統計」によって、具体的な統計結果が発表されています。 財務省貿易統計 http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001054248 この話を聞いても 「え 今って、世界的な経済不況じゃなかったの!?」 「輸出量が増えている割には、倒産する輸出業者が増えているのはなぜ?」 という疑問を抱いた方がほとんどではないでしょうか。 統計はあくまでも数字を集計したものにすぎず、それをどう解釈するかに よって、情報の活かし方が大きく変わってきます。 統計を解釈する際に必要なものの一つとして、「現場感覚」を挙げることが 可能です。 上述した疑問は、日々廃棄物と向き合っている方が、自分の目と耳で収集し た情報に基づく「現場感覚」です。 それは、貿易統計というデータを解釈する際にも大いに役立ちます。 では、今度は現場感覚の正しさを実証するため、輸出量とは別の指標に着目 してみましょう。 貿易統計では、輸出量の他に、輸出価額(value)が公開されています。 valueは、一ヶ月間にある国へ輸出したプラスチックの輸出価額の総額です ので、このまま見てもあまり役には立ちません。 輸出量が多い国と少ない国がありますので、輸出価額の総額を単純に比較 しても、あまり意味がないからです。 そこで、輸出量の多寡にかかわらず、輸出価額を比較するために、輸出単価 を算出してみました。 valueの単位は「千円」なので、 value×\1,000÷輸出数量(kg)=「1kgあたりの輸出単価」となります。 これなら、輸出量の多寡にかかわらず、輸出市場の世界的な状況を知ること ができます。 そうやって、廃プラスチックの輸出単価を算出し、今年の輸出単価と昨年の それとを比較すると すべての廃プラスチックにおいて、今年の輸出単価は昨年よりも1kgあた り20円以上安くなっています。 グラフ化してブログに掲載しておきました。 http://www.ace-compliance.com/blog/09toukei/090501trade.html 1kgあたり20円の差ですから、1tになると2万円の差になります。 この差は非常に大きいですね。 原油価格が安いので、手間ひまをかけてプラスチックをリサイクルするより も、ヴァージン原料を使用する方が安上がり ↓ ますます 廃プラスチックのリサイクル需要が減少 ↓ 高値では輸出できないので、値段を下げて廃プラスチックを輸出するしか ない・・・ これが、輸出量急増の裏で、輸出単価が伸び悩んでいる原因なのです。 廃プラスチックの輸出事業者は、昨年夏の最盛期時の貯金を取り崩しながら 現在は採算ギリギリで出荷し続け、市況の回復を待つという、消耗戦を強いら れています。 廃プラスチックのみならず、スクラップや古紙も同様の状況です。 体力が無い企業から順番に倒れているのが現実です。 輸出単価等はジワジワとしか上がりませんので、リサイクル資源が適正価格 に戻るまでには、もう少し時間が必要となりそうです。