vol.131 マニフェストの運用違反で書類送検
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09/06/05号
「マニフェストは保存すべき枚数が多く、どれが返送されてきたかを管理する だけで大変だ ひょっとすると、数年前のマニフェストだと、保存していない分があるかも しれない!」 こんな不安を抱えている事業者の方が多いのではないかと思います。 マニフェストに関する基礎知識のおさらいをしておくと 1.マニフェストの発行義務は排出事業者(委託者)にある 2.マニフェストは返送後5年間保存しておかねばならない ということが基本原則となります。 しかし、現実問題として、上記の2点だけを取り上げても、完璧にそれを 実行できている企業は非常に少数です。 仔細に調査すれば、ほとんどの企業で、マニフェストの運用に関する不具合 が見つかるものです。 その原因は、廃棄物処理法の規定を正しく理解していないことや 排出事業者責任の不認識 など 担当者の個人的な過失と言うよりは、組織としての構造的な問題が発生して いると言わざるを得ません。 多くの企業は、問題の解決を先延ばし、あるいは問題があること自体に気が ついておらず、今まではたまたま大きな事件に発展しなかったので 「たかがマニフェストの軽微な違反くらい大丈夫だろう」 というのが実情ではないでしょうか。 しかし、これからは「たかがマニフェスト」と簡単に言えなくなりそうです。 マニフェストの不適切な運用をしたことで、排出事業者が書類送検されると いう事件が発生しました! 中日新聞「産廃業者など書類送検 名古屋・中村署、管理票虚偽記載容疑で」 http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2009060302000145.html 『産業廃棄物管理票(マニフェスト)を廃棄したり、虚偽記載したりしたとし て、名古屋・中村署などは廃棄物処理法違反の疑いで、名古屋市の排出業者1 社と県内の中間処理会社7社を書類送検した。』 『送検容疑では、名古屋市中村区の建設解体会社は昨年9月から今年1月、コ ンクリートがらなどの処理を委託した同市や豊田市などの中間処理業者7社か ら受け取ったマニフェスト計21通を廃棄したとされる。』 『7社は処理が終わっていないのに、終了したとするマニフェストを渡してい たとされる。容疑を認めている。』 『中村署によると、排出業者は「帳簿があり、必要ないと思った」と説明。中 間処理業者は「事務簡素化のため」などと説明。産廃そのものはすでに処理さ れたという。』 今回の報道には2つのポイントがあります。 まず、第一に、 「排出事業者(委託者)」がマニフェストを保存していなかったために書類 送検されたという事実です。 廃棄物処理法では、マニフェストの発行と保存を排出事業者に対して義務付 けています。 「マニフェストを発行しなかった」場合と、「返送されてきたマニフェスト を保存しなかった」場合のいずれも、「6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の 罰金」という刑事罰が定められています(廃棄物処理法第29条)。 決して軽い刑罰ではないのですが、いまだに排出事業者にこの義務が浸透し ているとは言えないのが現実です。 報道によると、書類送検された排出事業者は、マニフェストを保存しなかっ た理由を、「帳簿があり、(マニフェストの保存は)必要ないと思った」と 説明しています。 実は、法律的には、排出事業者には帳簿の作成義務はありません(注:産業 廃棄物処理施設を設置している事業所や、特別管理産業廃棄物が発生する事業 所の場合は、帳簿の作成が必要です)。 書類送検された会社は、帳簿を付けるという法律の規定以上の努力をしなが ら、返ってきたマニフェストを捨てるという違法行為をしていたわけです。 第二のポイントとして、 中間処理業者が実際には産業廃棄物を処理していない時点で、 「処理をした」と記載をしてマニフェストを返送している点です。 中間処理業者はそのような不適切な報告をした理由として、 「事務の簡素化」という意味不明な言い訳をしています。 今回の事件では、排出事業者側の運用に大きな問題があったのは事実ですが、 仮に排出事業者が完璧な運用をしていたとしても、中間処理業者が勝手に虚 偽の記載をしてしまうと、排出事業者側でその事実を知ることは非常に困難で す。 これは、紙マニフェストではなく、電子マニフェストであっても同様です。 信頼できる処理業者を見極めることがいかに重要かをお分かりいただけると 思います。 幸い、「類は友を呼ぶ」の言葉通り、今回のようないい加減な処理をする廃 棄物処理企業は、いい加減な排出事業者としかつきあえません。 しかし、もしあなたの会社が、排出者責任に無頓着な企業で、マニフェスト や契約書の管理がいい加減な場合は・・・ いつあなたの会社が不法投棄に巻き込まれるかわかったものではありません! 今回の報道を、単なる事件報道として受け止めるのではなく、自社の管理体 制を見直す絶好の機会にしてください。