廃棄物処理法「大」改正の動き(第2回)

vol.144 廃棄物処理法「大」改正の動き(第2回)

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09/12/04号

 
 前回のメルマガでは、廃棄物処理制度専門委員会の概要をお伝えしました。

 廃棄物処理制度専門委員会では、
 現在の廃棄物処理制度の問題点として、以下の9項目について言及されて
いましたね。

 1.排出事業者責任の強化・徹底
 2.廃棄物処理業の許可制度の整備と優良化の推進
 3.廃棄物処理施設設置許可制度及び最終処分場対策の整備
 4.不法投棄対策の強化・徹底
 5.適正な処理が困難な廃棄物の対策の一層の推進
 6.排出抑制と循環的利用の推進・徹底
 7.地方自治体の運用
 8.廃棄物の輸出入
 9.低炭素社会との統合


 いの一番に、「排出事業者責任の強化・徹底」が挙げられていることに注意
が必要です。


 専門委員会では、その具体的な改善策として、

・小規模施設(=設置許可不要)で自社処理をしている排出事業者にも、帳簿
 の作成と保存を義務付けるべき
・排出事業者の産業廃棄物保管行為を行政が把握できるようにするべき
・委託先の処理業者のところを定期的に訪問し、委託契約どおりに処理されて
 いるかどうかを、排出事業者に確認させるべき
・建設系廃棄物の排出事業者は誰になるかを明確化するべき

 といった対策が必要と提言されています。


 今後法律改正の局面でどこまで盛り込まれるかはわかりませんが、従来の
改正とは違い、規制の対象が「廃棄物処理業者」から「排出事業者」にシフト
していく可能性が濃厚です。


 奇しくも、今年の9月に政権を担うことになった民主党が衆議院議員選挙の
前に打ち出した選挙公約「INDEX2009」でも、排出事業者責任の強化
につながる公約が提示されています。

※INDEX2009の詳細については、9月25日付の当メルマガでも既に
解説したところです。
 http://www.office-onoe.com/mail-magazine/090925.html


 今回のメルマガにも、再度民主党INDEX2009の廃棄物関連政策を
抜粋しておきます。

1.環境への影響の未然防止を徹底するなどの廃棄物・リサイクル政策の原則
  の確立 
2.製品製造者の廃棄製品引き取り対象品目の範囲 拡大 
3.情報公開による施策の透明化
4.一般廃棄物と産業廃棄物の区分の見直し(事業者が排出する廃棄物はすべ
  て事業系廃棄物と整理するなど) 
5.排出者責任の徹底 
6.リサイクル名目の不適正処理の防止 
7.計画的な省資源化・資源循環の推進 
8.リサイクル率・回収率引上げが必要な製品の指定 
9.リサイクル材の規格化による利用拡大 
10.罰則強化等による廃棄物管理の徹底


 上記のうち、「2」「5」「8」の3つは、排出事業者に対する規制の強化
となる公約です。


 廃棄物処理制度専門委員会報告書の中身と、民主党INDEX2009は、
補完こそすれ、排斥しあう存在ではありません


 政権主導の動きが激しい民主党がその気になれば、間違いなく、排出事業者
に対する規制は強化されます。


 ただ、幸か不幸かわかりませんが、今のところ、民主党は現在、廃棄物処理
制度の改革よりも、地球温暖化対策や環境税の導入に熱心なようです。


 そのため、次の通常国会で予定されている廃棄物処理法改正に関しては、
専門委員会報告書の内容より深く切り込むことはないかもしれません。


 しかしながら、選挙公約に掲げている以上、いずれは排出事業者責任の更な
る強化に動き出す可能性は残り続けます!


 排出事業者、特に製造事業者にとっては、2の「製品製造者の廃棄製品引き
取り対象品目の範囲拡大」などは、考えたくもない悪夢でしょう。


 日本にあるすべての製造事業者にかかってくる義務ではありませんが、少な
くとも、「資源有効利用促進法」の対象業種・製品にあてはまる事業者の場合
は、今から規制強化に対する準備をしておくのが良さそうです。


 単純に規制強化ととらえると、何もやる気がなくなってしまいますが
 「押し付けられた規制」ではなく、「環境配慮を社会にアピールする絶好の
機会」ととらえていただき、規制が変わる前に、自主的に変化を先取りして、
自社製品を回収できないかなどを検討してみてはどうでしょうか?


 また、処理業者の場合は、排出事業者責任の強化を「対岸の火事」として
とらえるのではなく、「苦境に陥った顧客の問題解決方法を提案できないか」
といった観点で、これまた商機(勝機)にしていただきたいと思います。


 製造事業者が急に自社製品を回収したいと思っても、製造事業者のみでは、
廃棄品を回収することは不可能です。


 回収のプロフェッショナルである処理業者から具体的な提案をし、製造事
業者とともに、回収網の構築を働きかけることなどが必要でしょう。



 これはいかなる政府報告書にも存在しない、単なる「予想」ですが、「事業
仕分け」などの手法を見ていると、廃棄物収集運搬業務の運送業への無条件開
放なども、風向きによっては実現する可能性があります。


 そうなる前に、廃棄物処理業の方は、各営業エリアで確固たる地盤(信用、
情報集積)を気づき、規制が撤廃されたとしても慌てなくても済む準備をして
おくことが重要です。


 運送業への無条件開放は単なる「予想」ですが、それに対応するための準備
は、異業種から廃棄物処理業へ参入するケースが増えている昨今、廃棄物処理
業が優先して取り組むべき戦略と思っています。