公営施設不振の原因

vol.146 公営施設不振の原因

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09/12/18号

 
 最近、管理型最終処分場が無い都道府県では、行政が設置主体となって、
管理型最終処分場を設置するところが増えています。


 直近の事例では、滋賀県(2008年)と山梨県(2009年)が、それぞ
れ管理型最終処分場を設置したところです。


 管理型最終処分場は、「廃油」や「廃酸」その他の液状廃棄物、感染性廃棄
物以外の廃棄物なら、大半のものが埋め立てられる処分場です。


 県内に管理型最終処分場が無い場合は、県外の処分場に最終処分を委託する
しかありませんが、その場合には、生産活動の利益を享受する一方で、その副
産物である廃棄物の処理を他の地域に押し付けていることになります。


 もちろん、管理型最終処分場が無い地域の行政・企業が、そのようなエゴ丸
出しの方針で活動を続けているわけではありませんが、ゴミの処理を押し付け
られる地域の立場としては、「自分の地域のゴミは、自分の地域で処理してく
れよ」と言いたくなるのも事実です。


 その意味では、行政自らが管理型最終処分場が存在しないことを問題視し、
公共が設置主体となって管理型最終処分場を設置するという果敢な姿勢は、
率直に評価する必要があります。


 しかしながら、必要不可欠な施設だからといって、テキトーな処理をして
地域の環境を汚染したり、テキトーな経営で巨額の赤字を生み出すお荷物施設
となってはいけません。



 今回のメルマガでは、
 上述した、滋賀県と山梨県の公営最終処分場の経営不振の問題を解説したい
と思います。


 12月に入り、「公営最終処分場の経営が芳しくない」という報道が続いて
います。

 ※山梨県の明野処分場に関する記事
  http://www.ace-compliance.com/blog/news/091211akeno.html

 ※滋賀県のクリーンセンター滋賀に関する記事
  http://www.ace-compliance.com/blog/news/091216shiga.html

 
 どちらの最終処分場も、設置早々、いきなり経営不振に陥っています。


 報道によると、両県の事業計画に最初から大きな見込み違いがあったようで
す。


 「地域に不可欠な施設である以上、設置すれば放っておいても廃棄物が
  集まってくるはず!」
 という思い込みで、用地買収費その他の巨額の設備投資をしたものの、収益
の源である、肝心の廃棄物がそれほど集まらなかったため、開業早々、赤字に
なったわけです。


 上掲の記事にも書きましたが、
 赤字を出さないためには、事業に伴う支出を、事業収入が上回らねばなりま
せん。
 そのためには、支出をできるだけ抑え、収入をできるだけ増やす必要があり
ます。


 小学生でもわかる話で恐縮です(笑)。


 ところが、大の大人であり、高度な教育を受けた人材で構成される行政が主
導する事業計画の場合

 民間では当たり前の、「得られるはずの事業収入」から逆算して立案する計
画ではなく、その施設を「管理するのに必要な経費」の積算から始め、「事業
収入」は後付けで「管理経費」とつじつまを合わせることがほとんどです。


 ビジネスの世界では考えられない思考パターンですが、「予算要求」が先に
存在する行政の世界では、これ以外の計画立案が試みられることはほぼありま
せん。


 まず、「管理費用」を見積り、「事業収入」は後からこじつけで「管理費用」
と整合性が取れる数字を「書き込むだけ」


 これが、紛れも無い、官の事業立案の本質です。


 一部、ヒステリックな反応も見受けられましたが、民主党による「事業仕分
け」で、このあたりの闇の一端に少し光が当てられました。

 もっとも、件の事業仕分けは、財務省主導のものですので、官の闇の全容が
明らかになったと喜ぶのは早計ですが・・・


 話が少し横道に逸れましたが、行政が主体となって立案した事業計画は、
余程の幸運に恵まれないかぎり、目論見どおりに実現することは稀です。


 最終処分場ではありませんが、「神奈川県が設置した焼却施設を民間事業者
に売却する方針」という報道がありました。

 ※産経新聞
 http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/kanagawa/091217/kng0912172301010-n1.htm


 事業の譲渡条件に、「事業団職員10人の雇用」という条件が入っています
が、年収200万円のパートさんとして雇うわけにはいかなさそうです。


 おそらく、安く見積もっても、平均年収は600~700万円になると思い
ますので、年額で6000万円超の固定費を考慮しておく必要があります。


 このことを忘れ、安易に売却話に飛びつくと高い買い物になりそうですね。