悪意なくやってしまう法律違反

vol.150 悪意なくやってしまう法律違反

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10/02/05号

 
 2004年に発覚した善商不法投棄事件


 現場に残された不法投棄物が火災の原因となることがあるため、岐阜市が
行政代執行を決意し、今後3年間で40万立方メートルを撤去するそうです。

 中日新聞 「本当に待ち遠しかった」 岐阜・椿洞の産廃撤去開始
 http://www.chunichi.co.jp/article/gifu/20100127/CK2010012702000025.html



 不法投棄に巻き込まれた場合のリスクは、下記のブログで解説しております
ので、そちらをご覧ください。

 「不法投棄にまつわるリスクを直視する」
 http://www.ace-compliance.com/blog/news/100127zensyo.html


 今回のメルマガは、このような大規模不法投棄に巻き込まれないための方法
について解説いたします。


 まず、不法投棄に巻き込まれないためにやるべき最も重要なことは、
 委託先処理業者のところを実際に訪問し、違法な操業をしていないかを自分
の目で確認してみることです。


 今年の国会で改正が予定されている廃棄物処理法にも、現地確認の必要性が
何らかの形で盛り込まれる可能性があります。

 このことについては、当メルマガでも既に解説済みです。
 vol.139 現地確認が義務付けされる!?
 http://www.office-onoe.com/mail-magazine/091009.html

 現地確認のポイントなどは、私の著書「産廃処理の基本と仕組みがよ~く
わかる本」の第5章で解説しておりますので、ご参照ください。


 不法投棄に限らず、廃棄物処理法に関する大部分の法的リスクは、現地確認
をキチンと行えば防げるものばかりです。
 「百聞は一見に如かず」で、違法なことをやりそうな相手かどうかは、一度
現場を見れば、ある程度わかってくるものです。


 もっとも、現場を100回訪れても、契約書などを一切保存していなければ
大きな法律違反を犯していることになります。


 具体的には、委託契約書とマニフェストの適切な運用と保存です。


 契約書とマニフェストを保存していない企業がいまだに多いのが現実ですが、
ここから先は、それらの書類を保存しているという前提で話を進めていきます。


 契約書やマニフェストは、ただ保存しているだけでは不十分であり、
 廃棄物処理法で定められた記載事項をキッチリ押さえておくことが必要です。


 善商不法投棄事件に関連して措置命令などを受けた排出事業者の大部分は、
契約書やマニフェストの保存はしていました。


 しかし、その中身が不十分であったため、巨額の撤去費用という大きな代償
を支払わされることになりました。


 よく散見される委託契約書の違反としては、

 「委託料金」や「委託する廃棄物の種類」などが書かれていないというもの
です。


 「委託料金」は、年初の契約時には確定しがたいという事情があるため、つ
いつい記載をせずに契約を締結してしまいがちですが、廃棄物処理法では、「
委託料金」の記載が義務付けられていますので、その記載を怠ると、適切な委
託契約をしていなかったとみなされてしまいます。


 その結果、「委託料金を契約書に書かないということは、不法投棄を前提に
契約をしていたのだろう」と責任が追及されることになります。


 例えば、月々の委託料金が変動するような場合は、契約書には「別途覚書で
決定する」などと記載しておき、契約書と覚書を一緒に保存しておくようにす
れば、月々の料金変動にも対応した契約書の運用が可能です。


 最後に、マニフェストでよくある違反としては、
 これまた「産業廃棄物の種類」や「委託数量」などの未記載などです。


 「委託数量」に関しては、マニフェスト発行時点で正確にキログラム単位の
重量などを書くのは困難だと思いますので、その場合は、「ドラム缶○本」
などと、委託した廃棄物の量をある程度特定できる形で数量欄に記載しておき、
後で中間処理業者などから正確な重量が報告されてきた段階で、その数値を
マニフェストに転記するようにしておきましょう。



 このように、書類に関するミスは、ちょっとした不注意で起こってしまう
ミスばかりですが、いざ不法投棄事件に巻き込まれてしまうと、それが取り返
しのつかないアクシデントにつながる可能性が高くなります。


 契約書などに数字を記載するには、1分もあれば十分だと思います。


 そのわずか1分の作業で、不法投棄物の撤去といった数百万円の余分なコス
トを免れることが可能となります。


 「たかが料金の記載くらい」と侮ることなく、愚直に書類をチェックし続け
ることが最も重要です。