不法投棄に巻き込まれないための5ヶ条

vol.151 不法投棄に巻き込まれないための5ヶ条

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10/02/12号

 
 佐賀新聞に、
「古紙再生過程で発生する製紙スラッジ(汚泥)が牧場に不法投棄された件に
関し、製紙スラッジの排出事業者である製紙会社の環境管理課長に関与の疑い
があるため、その排出事業者側の課長が逮捕された」という報道がありました。

 佐賀新聞
 http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.1546831.article.html


 逮捕された環境管理課長は、不法投棄に関与した収集運搬業者のことを「当
社の取引先ではない(=勝手に不法投棄された)」と、容疑を否認している模
様です。


 捜査当局は、その主張を否認するために、製紙会社の廃棄物処理委託契約書
やマニフェスト、伝票その他の帳簿類を製紙会社から押収し、これから容疑者
を厳しく追及するのだと思います。(記事の写真を見ると、捜査員が段ボール
箱を脇に抱えて製紙会社に出入りしています)


 この事件から得られる重要な教訓は2つあります。


 第1に、不法投棄が発生したときには、排出事業者側で適切な委託処理手続
きをしていたかどうかで、企業の命運が大きく変わるということ


 このことについては、前回のメルマガ「悪意なくやってしまう法律違反」で
解説したところです。

 http://www.office-onoe.com/mail-magazine/100205.html


 「不法投棄に関与していない」と主張するためには、最低限、適切な委託契
約書と、それに基づくマニフェストの保存が必要でしたね。


 今回の事件のように、排出事業者自身の関与が疑われているような場合は、
「不法投棄実行者とはいかなる取引も無い」という事実を示すために、委託契
約書などの他に、帳簿その他の取引関係書類を差し出す必要があります。



 第2に、実際は不法投棄でありながら、「リサイクル」や「リユース」と称
して、不当に廃棄物処理法の適用を免れようとするケースが最近増えているこ
とです。


 ここ数年、なぜか牧場に廃棄物の不法投棄をする事件が多くなっています。


 法的には、本当に牛や豚に廃棄物を食べさせるのだとしても、廃棄物処理業
の許可を持たずに、「処理費用を徴収しながら」廃棄物を引き受けることはで
きません。


 そのような事業を合法的に行う唯一の方法は、家畜の飼料として、牧場側が
有償で廃棄物(有価物?)を買取ることです。


 家畜に廃棄物を食べさせるという事業内容では、廃棄物処理業の許可を取得
することができないからです。


 排出事業者としては、リサイクルという美名に騙されることなく、冷静に委
託先の処理技術や取得許可を確認することが重要です。 


 「我が社とは関係のない事件」としてやり過ごすことも可能ですが、時と場
合によっては、あらゆる排出事業者が同じ轍を踏む可能性があります。


 「我が社の現状に落ち度はないか?」という観点で、事件報道を再度読み返
していただくと、「自社にも関係のあるリスクではないか」と感じていただけ
るものと思います。


 それでは、以下、不法投棄に巻き込まれないための鉄則を簡潔に解説します。
 「4 定期的な現地確認」以外は、どんな企業でもすぐにできる取組みだと
思いますので、管理状況に不安がある方はすぐに改善してみてください。



 不法投棄に巻き込まれないための5ヶ条

1. 廃棄物管理窓口の一元化
 * 契約書の管理部署と、廃棄物処理の発注部署が異なっていると、管理部署
  が想定していない廃棄物処理業者が登場するきっかけになる。
  * 少なくとも、契約書の内容や、業者への発注状況などの情報共有を両部署
  間でしておくことが必須

2. 記載事項を充たした委託契約書の作成と保存
  * 法定記載事項を網羅していない委託契約書なら、契約書を作っていないの
  と一緒。会社を守る武器とはならない。
  * 契約書を作っただけで満足するのではなく、契約終了後5年間は、いつで
  もすぐ取り出せるように、保管しておく

3. 記載漏れのないマニフェストの発行と保存
  * 契約書と同様、記載漏れのあるマニフェストも、重大な法律違反とみなさ
  れることになるので、ケアレスミスは極力防ぐ
  * 紙マニフェストの場合は、5年間の保存義務がある
  * マニフェストの発行件数が多い場合は、電子マニフェストに切り替えるの
  が有効なケースがある

4. 委託先処理業者の状況を現地に行って定期的に確認
  * 廃棄物処理法改正にも盛り込まれる可能性あり
  * リスク管理の基本として、少なくとも、新規契約時には、委託予定処理業
  者の所を訪問し、処理実態を実際に確認しておくべき

5. 廃棄物管理状況を定期的に内部チェックする
  * 自社内部の管理ルールが緩んでいないかどうかを常にチェックすること
  * 担当者の異動により、それまでは問題なかった管理が、一夜にして疎かに
  される危険性を知る