2010年改正で建設廃棄物の扱いはこう変わる

vol.154 2010年改正で建設廃棄物の扱いはこう変わる

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10/03/12号

 
 前回のメルマガでは、廃棄物処理法改正案が公開されたことを速報いたしま
した。


 その後、1週間メルマガの配信を飛ばしていた間の3月5日に、廃棄物処理
法改正案が正式に閣議決定されました。

 3月5日の環境省報道発表資料
 http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=12222

 閣議決定を得た法律改正案は、上記のURLで全文を参照できます。
 


 改正のポイントは前回のメルマガで解説したところですが、
 今回のメルマガから、重要な改正事項の詳細を解説していきます。


 第1回目は、建設系廃棄物の処理責任についてです。


 今回の法律改正では、第21条の3という新しい条文が追加され、建設系廃
棄物の処理責任を個別具体的に規定するという、新しい法律設計が加わります。


 法律の構成を見ると

 (第21条の3第1項)
 元請業者を排出事業者として定義

 (第21条の3第2項)
 下請業者も排出事業者とみなして、保管基準や改善命令の対象として規定

 (第21条の3第3項)
 請負契約に従い、下請業者が自ら運搬を行う場合は、下請業者を排出事業者
 とみなす

 (第21条の3第4項)
 下請業者が他者に建設廃棄物の処理を委託する場合は、下請業者を建設廃棄
 物の排出事業者とみなす
 
 となっています。


 新しく追加されるこの条文を大まかに解説すると、


 まず最初に、従来からの懸案であった、建設系廃棄物の排出事業者を「元請」
業者であると明示し


 次に、現実の建設工事の実態に配慮した規定として、「下請」業者にも法律
の網の目をかぶせるイメージとなります。


 今回の法律改正によって、元請がすべての建設廃棄物の排出事業者となるわ
けではなく、請負契約の内容によっては、下請業者にも排出事業者として振舞
うことが認められるようになります。


 ただし、下請業者が排出事業者になるからと言って、下請業者が建設廃棄物
を自由に破砕(中間処理)したり、埋立(最終処分)したりできるようになる
わけではありません!


 今回の法律改正によって、下請業者が排出事業者として可能になる行為は、
自社が下請として施工した現場で発生した廃棄物の「保管」と「運搬」だけ
です。


 その他、建設現場から別の場所に廃棄物を持ち帰って保管をする場合には、
事前に都道府県知事に届出を行う義務が追加されますので、下請業者はその
届出を行う義務があります。


 こうして見ると、今回の法律改正は、建設業者の窮状に配慮した制度改革で
はなく、不法投棄の元凶であった建設廃棄物の管理と捕捉を徹底することが目
的であったとわかります。


 一例を挙げると、
 下請が自社の責任でできる行為は増えるから、元請の責任が軽減されるとい
うことはなく、下請が不適切な保管や運搬を行った場合には、元請の監督責任
を問えるように、法律の設計が変更されました。(元請が措置命令の対象とし
て規定される)


「下請に全部廃棄物を処理させているから、元請は何も心配する必要はない」
ということにはなりそうもありませんので、建設関連の方はくれぐれもご注意
ください。


 また、「下請」の定義としては、建設工事に関する下請業者だけが「下請」
となり、建設工事にタッチしない廃棄物処理企業などが、廃棄物管理だけを
下請(つまり、処理委託を受けること)する際には、従来通り、廃棄物処理業
の許可が必要です。


 2010年の法律改正によって、下請業者には自由にできる行為が増えるのは
間違いありません。


 実務上一番のメリットとしては、従来下請に必要とされてきた、収集運搬業
の許可取得が不要になるというものがあります。


 今までは、元請のみが排出事業者であり、その元請が出した廃棄物を下請が
運ぶ場合は、他社の出した廃棄物を運搬する以上、収集運搬業の許可を取れ
という運用になっていました。


 それが、新しい第21条の3第3項で許可不要と明示されるわけですので、
今後は収集運搬業の申請件数が激減しそうです。


 行政書士にとっては大きな悩みの種となりそうです(笑)。