不法投棄を宇宙から監視?

vol.119 不法投棄を宇宙から監視?

無料メールマガジン「よく分かる!!廃棄物問題」へのご登録はこちらからどうぞ

powered byまぐまぐトップページへ

 
09/01/16号
 
 産業廃棄物の不法投棄を宇宙から監視できる時代になったようです。


 YOMIURI ONLINE から表題の記事を抜粋します。
 http://www.yomiuri.co.jp/space/news/20090108-OYT1T00490.htm

 産業廃棄物の不法投棄を減らすため、環境省は、観測衛星を使った宇宙から の監視を始める。  試用した岩手県が、違反業者の摘発につなげたのを受け、全国展開を図るこ とにした。2009年度は、希望する都道府県とともに運用する方針だ。  06年に打ち上げられた世界最大級の地球観測衛星「だいち」(宇宙航空研 究開発機構所有)の画像データを活用する。だいちは2・5メートルの大きさ まで判別できる解像度があり、利用料金は、詳細画像の撮影が1回20万円 で、米国の商用衛星の10分の1~8分の1と安い。  岩手県は、岩手大が開発したカラー画像合成システムを用い、08年1月か ら監視目的の試験運用を続けている。画像で土地の変化や廃棄物の堆積)状 況などをつかみ、陸上からは難しい山間部の要注意地点などの監視に効果を 発揮。これまでに業者が無許可で処理場を拡充したケースなどを発見し、行政指導した。
 一見すると、「技術の進歩はここまで進んだか」と思いたくなりますが  なんのことはない  衛星からの画像を用いることによって、不法投棄現場のスクリーニングが、 より簡単に行いやすくなったというだけのことです。  「人工衛星」という点が目新しいだけで、別にセスナ機で撮影した航空写真 でも、まったく同じことができます。  こういった、事務所にいながらにして監視している「気分」にさせるテクノ ロジーは、耳障りも悪くないので、もてはやしたい気にさせられますが  「ある山のこの辺りで不法投棄が行われている」というレベルまで絞らなけ れば、衛星画像をスクリーニングに使用することは不可能です。  現時点では、SF映画のように、不法投棄が発生した時点で異変を自動検知 し、それをリアルタイムで行政に通報、という使い方は絶対にできません。  そもそも、「不法投棄現場は、大阪府の○○市のこの辺り・・・」という スクリーニング自体は、行政の担当者が行う必要があります。  ここで疑問が一つ発生するのですが、そこまでスクリーニングできているの であれば、チマチマと衛星の画像を取り寄せる手間を掛けるのではなく、なぜ 現場にサッサと急行しないのか? ということです。  ちょっと前の人気刑事ドラマで  「事件は会議室で起きてるんじゃない。事件は現場で起こってるんだ!」と いうものがありました。  衛星画像にかじりついていても、今そこにある不法投棄は止まりません。  行政の仕事は不法投棄を「撲滅すること」であって  「不法投棄現場の上空撮影をすること」ではありません。  目的と手段を混同してはなりません。  まぁ せっかく環境省が予算措置をしてくれたのですから、  なんとかこの技術を生かす方法がないものかと考えてみました。  こんな問題を抱えた現場では役に立ちそうです。 「不法投棄が頻発しているため、監視活動に十分な人員を配置する余裕がない」  こうした自治体の場合は、衛星画像を用いた不法投棄現場のスクリーニング 結果を元に人員を効率的に配備し、監視や摘発に役立てるメリットが出てきま す。  でも、そんな現場が本当にあるならば、「監視」以前に、「住民の生活環境 の保全」の方を優先して解決しなくてはならないでしょう・・・  衛星を用いた「監視」は、あくまでも不法投棄を撲滅するための「手段」で あって、行政が達成を目指すべき「目的」ではありません。  機械に頼り切るのではなく、生身の人間を相手にした「指導力」や「調整力」 もしっかりと発揮していただきたいものです。