「経理的基礎」ってなに?

vol.134 「経理的基礎」ってなに?

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09/07/17号

 
 「経理的基礎がある」とは、「産業廃棄物処理業を的確に、かつ継続して行
うに足りる財政的基盤があること」と定義できます。


 「経理的基礎の有無」は、産業廃棄物処理業の許可条件の一つです。


 言いかえると、都道府県知事は、経理的基礎が「無い」業者に対しては、産
業廃棄物処理業の許可を出してはならないということになります。


 では、「経理的基礎がある」とは、具体的に資金がいくらあれば良いので
しょうか?


 100万円?


 それとも1億円?


 その答えは、廃棄物処理企業の事業規模や、事業の内容によって異なります。


 最終処分業の場合は、維持管理費用や用地取得費として、数億から10億円
程度の資金が必要になることが大半です。


 収集運搬業の場合は、極端な話、車1台を用意できれば、事業自体はすぐ行
えます。


 このように、具体的な金額で、経理的基礎を明示するのは困難なのですが、
廃棄物処理法にも詳しくその内容は定義されていません。


 法律には明示されていませんが、産業廃棄物処理業の許可を出す際に、都道
府県知事は、その事業者の「経理的基礎の有無」を審査しなければなりません。


 実務においては、事業者に具体的な現預金の額や負債の有無などを申告させ
 その内容を審査するケースがほとんどです。


 場合によっては、申告内容の裏付けとして、預金通帳のコピーや残高証明書
をつけさせることもありますが、大半は自己申告の内容のみに基づいて判断し
ます。


 行政としては、法律や施行規則に具体的な審査基準が書いていない以上、上
記のような方法で審査せざるを得ず、その結果「経理的基礎がある」と判断で
きる案件に対しては、許可をしなければなりません。


 近年、最終処分場をめぐる住民訴訟が増加しており、経理的基礎の有無に関
して、「行政の判断が適切ではなかった」という判決が出た実例があります。


 上述したように、行政としては、「法律に則って審査をしている以上、これ
以上つっこんだ内容の審査は無理だ」という悩みがあります。


 しかしながら、いくら突っ込んだ審査が難しいとしても

 行政の責任としては
 経理的基礎を十分に有する企業に操業させ、近隣住民の生活環境を守ること
が何よりも優先されます。


 「行政の悩み」と「住民の不安」の両方を解消するためには、「経理的基礎
を確かめるための具体的な基準」を明確にして行く必要がある

 という認識に基づき、現在「廃棄物処理制度専門委員会」において、その
問題提起がなされたところです。


 具体的な金額や書類を明示するのは困難な基準ですので、次回の法律改正に
盛り込まれるかどうかは微妙なところですが、なんらかの改善が予想される
分野です。

 環境省における具体的な検討状況については、下記のURLのコラムで詳細
を解説しております。

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