現地確認が義務付けされる!?

vol.139 現地確認が義務付けされる!?

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09/10/09号

 
 現在、環境省中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会 廃棄物処理制度専
門委員会において、廃棄物処理制度に関する問題点や、法律改正の方向性の議
論がなされているところです。

※当メルマガでも、既に2回ご紹介したところです。
 vol.133 建設廃棄物の排出事業者は誰になる?
 http://www.office-onoe.com/mail-magazine/090626.html
 
 vol.134 「経理的基礎」ってなに?
 http://www.office-onoe.com/mail-magazine/090717.html


 去る9月15日に開催された、第10回の専門委員会において、
「廃棄物処理制度専門委員会報告書(案)」を元に具体的な議論が進められま
した。

※廃棄物処理制度専門委員会報告書(案)
 http://www.env.go.jp/council/03haiki/y0320-10/mat02.pdf


 専門委員会の検討状況を最初から読み返すと、今回の法律改正の目玉は、
「排出事業者責任の強化・徹底」というところにありそうです。


 上記の報告書(案)には、そのための具体的なポイントとして、
 (1)適正な自ら処理の確保
 (2)適正な委託処理の確保
 (3)排出事業者の明確化  の3点が挙げられています。


 このうち、(3)の排出事業者の明確化につきましては、「建設工事において
発生した産業廃棄物の排出事業者は元請事業者である」ことを明記するという
だけですので、建設関連事業者でない限りは、特に対策は必要ありません。


 しかし、(1)と(2)の場合は、今後の状況次第で、排出事業者にとって大きな
負担となる可能性がある項目です。

 それぞれのポイントをまとめます。

(1)適正な自ら処理の確保
・産業廃棄物を自ら処理している排出事業者に対して、帳簿の作成や保存を
 求めるべき
・産業廃棄物を自ら保管する排出事業者に対して、保管場所などを予め行政
 に届出させるべき


(2)適正な委託処理の確保
・マニフェストが一定期間内に返ってこない、または虚偽記載があるなどの
 マニフェスト義務違反に対して、行政が迅速に確認し、対処できる仕組み
 を設けるべき
・マニフェストのA票の保存を義務付けるべき
・排出事業者は、委託先の処理業者が、適切に産業廃棄物を処理しているか
 どうかを定期的に確認するべき
・行政処分を受けた処理業者は、排出事業者に速やかに連絡をし、その連絡
 を受けた排出事業者は必要な措置を講じるべき

 という提言がなされています。



 今回のメルマガでは、「委託先業者の定期的な確認」について解説します。


 この提言を見た方の多くは、
 「すべての委託先業者を確認なんて不可能」
 「信頼できる処理業者かどうかは、行政の責任で確認するべき」という意見
で、「よくぞ言ってくれた!」という好意的な見方は皆無のようです(笑)。


 個人的には、「よくぞ 廃棄物問題の根幹に切り込んでくれた」と評価して
いるのですが、定期的な確認の「義務付け」までは必要ないと思っています。


 もっとも、専門委員会の報告書では、「確認するべき」と書いているだけで、
巷で騒がれているような「確認を義務付けるべき」とは一言も書かれていませ
ん。


 「義務付けによって、新たなコストが発生してしまう!」というのは、過敏
に反応しすぎと言えます。


 廃棄物処理法では、
「排出事業者は、委託する産業廃棄物の処理が『できる』処理業者に委託をし
 なさい」とされています。


 『できる』かどうかを判断するためには、処理業者の許可証を確認すること
は当然として、「許可証には『廃プラスチック類』と書かれているが、その業
者の施設で本当に我が社の廃棄物は処理できるのか」といったことも確認する
必要があります。


 その確認の手段としては、「業者へのヒアリング」や「サンプルの提出」な
どの方法もありますが、一番確実なのは、排出事業者自身が処理業者の事業場
を訪問し、実際に自分の目でチェックをすることです。

※拙著「最新産廃処理の基本と仕組みがよ~くわかる本」の第5章にも書きま
 した。



 私は、実際の企業指導の場面において、
「少なくとも、新たに委託契約をする時や、委託契約の更新をする際には、業
 者さんのところを訪問し、排出事業者自身の目で確認をすることが、リスク
 対策上は必要です」とご指導しています。


 そのようにお奨めするのは、
 事業場を実際に訪問することで、処理が技術的に可能かどうかを確認できる
だけではなく、「従業員の接客態度」や「廃棄物保管場所がキチンと管理され
ているか」などを肌で感じることができるからです。


 言い換えると、「法律で決められた義務だから」という嫌々の姿勢ではなく
「我が社のリスクを最小限度に抑えるための現地確認」という積極的な姿勢で
臨まないかぎり、効果的な現地確認を行うことは難しいでしょう。


 国も専門委員会も、「毎年全部の委託先業者を訪問せよ」とは言っていない
のですから、ここは過剰に反応することなく、「排出事業者に不可欠のリスク
対策」と考え、現地確認の重要性を再認識していただければと思います。



 独断と偏見で今後の方向性を予想すると

・法律の改正によって、定期的な確認の「義務付け」がされることはなさそう
・しかし、委託基準の一つに、具体的な確認方法が例示される可能性は高いか
 も?

 と考えています。


 あなたはどう考えますか?